2年で過去最高の輸出額にまで回復!
“不死鳥の蘇り”を導いた秘密とは?

 まず赤潮の心配のない外海に、避難係留施設生簀を設置。さらに、赤潮時に海中深くまで沈めることで、被害抑制に効果がある「浮沈式生簀」を整備した。さらに、新たなブリ養殖の方向性を切り開きはじめた。出荷のタイミングに合わせて、養殖の根本から見直したのである。

 一般的に、ブリ養殖は天然の種苗に依存している。東町漁協のブリの養殖過程としては、4月ごろ、まず藻についた天然種苗(モジャコ)を採捕し、餌付けを行う。そして9月ごろ800gになったら育成用の生簀へ移し、翌年春1.3kgになったら成魚用の大型生簀に移す。

 出荷は体重が市場のニーズとしての目途である、約4kgを超えた2年目の10月ごろから3年目の9月まで行う。これまで夏場の出荷は「3年魚」が主体だった。しかし、この時期が最も赤潮が発生しやすく、大きい魚ほど斃死しやすい。

 よって生産者がリスクの高い3年魚を所有することを減らすべく、赤潮発生前に出荷できる「2年魚」中心の出荷体制を目指した。そのためには、通常9月から出荷となる2年魚が、7月の時点で市場に出せるレベルのサイズになっていることが必要だ。

2013年、新たに完成した「新星鰤王」

 研究の結果、4月に採捕したモジャコの中でも、大きいサイズの「一番仔」だけを集めて餌付けし、大きな稚魚を育成し、早期出荷用に育て上げた「早生鰤王」が誕生。夏場限定での販売だ。

「早生鰤王」はリスク軽減だけではなく、さまざまなメリットを生んだ。育成期間が短いことで、餌が少なくてすむため、コストを抑制できる。また、3年目の5~6月ごろに生じていた産卵後の体重減少による脂のノリの低下や、身割れといった肉質の低下を軽減することができた。

 さらに脂肪量、DHA、EPA含有量も3年ものを上回り、血合いもきれいで変色も遅く、夏場の刺身にもおすすめという、新たな販売戦略にも貢献するブリを完成させた。

 それだけではない。さらに、7月以前という時期からの出荷に対応できるブリの開発にも取り組んだ。早期採卵の「人工種苗」の導入をスタートしたのだ。

 水産総合研究センター西海区水産研究所五島庁舎が提供した人工種苗を、水温が高く、育ちの早い南種子島で中間育成。そののち、長島町の赤潮対策で整備した外海の沖合で育てた早期ブリ「新星鰤王」が完成した。

 新星鰤王も新たな可能性を持っていた。

「海外では、人工種苗で育てた、履歴管理の徹底された養殖魚が好まれます」(中薗さん)。海外への拡販にも貢献できるブリなのだ。

 東町漁協は、苦境をバネに、周年出荷へ万全の態勢を整えたばかりか付加価値のあるブリを作り上げてしまったのだ。

 その結果、平成10年の120億円から赤潮後の平成22年に49億まで激減した売上はこうした取り組みが功を奏して次第に数字をのばし、平成27年には95億円まで回復。

 輸出にいたっては、ピーク時の40%という5億円まで落ち込んだにもかかわらず、平成25年には過去最高の売上と、ほぼ同額の12億円にまで奇跡のV次回復した。そして平成26年には、加工尾数も過去最高の114万尾を達成した。不死鳥のような蘇りである。

 未来を切り開く東町漁協の取り組み。生産者からの信頼も厚く、後継者も多い。東町漁協青壮年部に所属し、濵村水産・濵村修二さんを訪ねた。現在38歳。家業の後継者として、高校を卒業後、すぐに養殖に携わった。