
レストランではとろけるような鰤王の刺身やあら煮がセットになった「鰤王定食」、甘口の醤油だれに漬け込み、カラリと揚げた「ブリカツ定食」や、鰤王を贅沢に厚切りして照り焼きダレに漬けて焼き上げた「ブリステーキ定食」が大人気。連日、盛況となっている。
ただし、ECサイトもレストランも「鰤王ブランドのPR だけを担うわけではない」と中薗さんは語る。
「もちろん鰤王を、もっと多くの消費者の方に知っていただくことも大切ですが、それだけに特化するということはしたくない。町には特産のじゃがいもや、みかんなど、いいものがたくさんある。長島町のPRにつながるように取り組んでいきたいと思っています」

鰤王を入り口に、「長島町」のことを知ってほしい。だからあえて、名称も『長島大陸』という言葉を前面に出している。
「長島大陸」とは、昨年より総務省から出向し、30歳の史上最年少副町長として、地方創生に取り組む井上貴至副町長によるネーミングだ。
島でありながら、大陸のような変化に富んだ環境と、そこで育まれた食材の宝庫であり、食料自給率も100%を超える。島の中ですべて完結する、というメッセージを込めて、「長島ブランド」を発信するために名づけられた。
東京都内でも「鰤王」が食べられる!
「長島大陸」のキッチンカーも

そして、今度は東京で「長島大陸」の屋号をしょった、ユニークな試みがスタートした。JFAでは長島町と連携しながら、今年3月、「長島大陸ブリうま食堂」を、オープン。といっても、店舗ではない。「キッチンカー」だ。
平日は赤坂や新宿などのオフィス街、週末はイベント会場へと鰤王と長島町の特産物を使った弁当を積んで週4日、都内を走り回る。いわば「長島町の移動アンテナショップ」だ。
東京で土地や店舗を借りてアンテナショップをオープンするとなれば多額の初期投資が必要だが、キッチンカーなら不要、というアイデアである。
新宿住友ビルディング前の「新宿マルシェ」に出店している「長島大陸ブリうま食堂」を訪ねた。「漁港から直送」「ブリ養殖世界一」の文字が躍り、ブリ、タイ、タコなどのイラストが描かれた、鮮やかな水色のキッチンカーはひときわ目立つ。

「長島町のことを知っている人は少ないですし、そもそも鹿児島県の位置がわかっているひとが少数」と苦笑するのはJFAの社員であり、長島町から赴任した店長の山口新悟さん。キッチンカーに描かれた「九州のイラスト」で説明することもたびたびだ。
しかし、「出身地」はわからなくても「鰤王」の魅力は東京の人々の心をつかんでいた。鰤王の爽やかな脂のり、ふっくらした身の味わいを存分に楽しめるお弁当はボリューム満点。しかも安い! 容器からはみ出しそうなほど、大きくて分厚い鰤王の照り焼きがドーンとのった「ブリデカ弁当」は800円! 揚げたてブリカツが3枚ものった「The ブリカツ弁当」は700円!
「じつのところ、長島町の僕たちからすれば、こんな『高い値段』で売れるかどうか心配でした」(山口さん)

それは杞憂に終わった。ランチ時のサラリーマン、OLからは味もボリュームも大好評。イベントでは大行列ができるほど人気を博し、話題を呼んでいる。
「リピーターのお客様も多いです」(山口さん)。お弁当を購入した際には、長島大陸市場のポストカードも同封し、サイトとの連携をはかる。
「お弁当をきっかけに長島町のことを知っていただいて、ぜひ、長島町で新鮮な鰤王を食べてもらえたら、と思います」
キッチンカーの宣伝効果も大きい。「車体を写真に撮影し、SNSで拡散する人も多い」(山口さん)とのことで、長島町のPRにも貢献している。
好評につき出店場所はさらに増える予定。都内をさらに回遊する姿が見られそうだ。