そもそもEU創設の目的は、独仏の資源争奪戦から発生した戦乱を回避し、欧州の恒久的平和と安定を実現することだ。こうして、EUは経済の強い国が経済の弱い国を支える仕組みを強化してきた。

 この理念の下、加盟国は、EUの経済基盤を整備するために、資金を拠出してきた。これは、自国の財政の一部をEUに移し、中東欧諸国などの発展を支えてきた。EU財政にとって、独仏に次いで英国は第3位の財政拠出国である。英国の離脱は欧州の安定を大きく低下させるはずだ。

 一方、EU加盟国には、自由なヒト・モノ・カネの移動に支えられた単一市場へのアクセスというメリットがある。言うまでもなく離脱は、そうしたメリットの喪失だ。EU対米国、EU対世界という、規模の論理で経済外交を進めることもできなくなる。こうしたメリットが加盟の負担を上回るからこそ、EUの拡大と収斂が進んだ。

欧州統合という壮大な実験を
終焉させるほどのマグニチュード

 英国が国民投票でEUから離脱する前例を作ってしまうと、“自国の決定権を回復させる”という考えが各国に広まる恐れがある。足元を見れば、欧州各国にはメリットを強調する材料よりも、むしろ、不満を掻き立てる要因が多い。ドイツが主張してきた財政緊縮の結果、欧州経済は低迷している。移民、難民問題への批判や不満も高まっている。それらは、ポピュリズム政治の躍進を支えるため、EU離脱の動きは広まりやすい。

 すでに、オランダでは英国が離脱を選択するなら、「自分たちも国民投票で是非を問うべき」との考えが高まっている。EU・ユーロ圏の中心的存在であるドイツでさえ、反ユーロを掲げる政党“ドイツのための選択肢”が台頭している。フランスやスペイン等でも、世論は緊縮疲れが鮮明であり、「移民や難民に職を奪われている」という批判も根強い。

 英国がEU離脱を選択すれば、こうした“欧州懐疑主義”への支持が高まり、欧州の拡大・統合よりも欧州からの離反・分裂が進みやすくなる。これがEU崩壊の始まりになるかもしれない。

 その結果、長期的な目標と考えられる“ユナイテッド・ステーツ・オブ・ヨーロッパ”の考えも大きく後退するだろう。それは第2次世界大戦後70年以上かけて進んできた、欧州統合という壮大な実験の失敗と終焉すら想起させるほどのマグニチュードを孕んでいる。