若手が次々辞めていく
「まるで戦後の日本やな」
進駐軍のようなホンハイの振る舞いを目の当たりにして、シャープでは若手を中心に人材の流出に歯止めがかからない。
「苦しいけど、何とかみんなでがんばろう」。そう声を掛けてくれていた役員もとうにいなくなり、「精神的支柱というか、心のよりどころになるような人がいない。誰を信じて付いていけばいいのか、正直分からないんですよね」。グラスを傾けながら、そう語った50代の管理職の顔は疲れ切っていた。
いまだに光明が見えないシャープは、液晶パネルなどの販売不振に加え、ホンハイに言われるがまま在庫の大幅処理を進めたことで、2016年3月期は最終赤字が2559億円にも上り、連結ベースでは312億円の債務超過に陥った。ホンハイがまたぞろ出資をほごにする理由にしかねないネタを与えてしまっている。
ここまで一方的に振り回されるのは、高橋社長がかたくなに法的整理というカードを持とうとしなかったことも影響している。
実際に会社更生法の申請となれば、「大企業を倒産させた男」という烙印を押されることは避けられない。だが、時にカードをちらつかせることで、首根っこを押さえ付けているホンハイや銀行に対し、自分たちの要求を通すこともできたはずだった。
「(法的整理で)迷惑を掛けることになる取引先の人たちの顔が、どうしても浮かぶんだ」。高橋社長はそう心情を吐露するが、そのせいで首を切られる社員には思いが至らず、また新たな爆弾を抱え込もうとしている。