海運激変! トランプ関税下の暗夜航路#6Photo by Yoshihisa Wada

鉄鋼原料や穀物などのドライバルク(乾貨物)輸送を手掛けるNSユナイテッド海運。トランプ米大統領の関税政策は、追い風にも逆風にもなり得ると山中一馬社長は言う。特集『海運激変! トランプ関税下の暗夜航路』の#6では、山中社長が、大株主である日本製鉄や日本郵船との知られざる関係や今後の配当方針について明らかにした。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

ドライバルク輸送は今期も底堅い
トランプ関税はポジティブな影響も

――トランプ米大統領の諸政策が業績に与える影響について、山中社長の考えをお聞かせください。

 2026年3月期の業績を見通す上で、最も大きなポイントはドライバルク(乾貨物)市況と為替です。この二つが業績に非常に大きく影響します。

 われわれの本業であるドライバルク輸送では、各海運会社が主力となる次世代燃料を慎重に見極めていることから、新造船の供給圧力は高くないとみている。従って、需給は緩むことなく基本的には底堅い展開を予想しています。

 ですが、米国を中心とした世界経済の見通しが悪くなっており、為替については、トランプ大統領の一つ一つの発言によって相場が大きく振れています。それを日本銀行やFRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策にどう反映させるのか、まだ不透明なので、1ドル140円で前提を置きました。25年3月期に比べて円高に推移しているので減収減益を見込んでいます。

 トランプ大統領の関税政策の最終的な着地点は誰も分からない状態です。今後、世界各国、企業の反応には注視していく必要がありますが、弊社のサプライチェーンに全く影響がないかといわれれば、それは違うと認識している。

 トランプ関税の影響が弊社の既存の航路や輸送需要に対して、ネガティブに作用する恐れはある。

 鉄鋼関連の原料や製品の輸送が私どものメインの事業ですが、米国において自動車の関税が引き上げられれば、日本で米国向けの自動車の生産が落ち、自動車は鉄鋼の用途なので、鉄鋼の生産も落ちる。これによって、鉄鋼原料の輸送量にも少なからず影響が出るはずです。

 ですが、その一方で新たな輸送ニーズが生まれるかもしれない。われわれのビジネスとしてポジティブな方向に何かできないか、ネタを探しているところです。

――サプライチェーンの変化をポジティブに乗り越えていく具体的な方策を教えてください。

 例えばドライバルクの中でも穀物の輸送ですと、これまで中国へ米国から輸送されていたものが、ブラジルなど南米からの輸送量が増加することが予想されています。新たな物流、航路の開拓ができる可能性があり、チャンスがあれば積極的に参入していきたい。

 プラス、マイナスの両面で業績に影響が生じると思うので、市況やお客さまの動向をこれまで以上に注視しながら事業を進めていきます。

――中期経営計画の中には「長期安定収益をもたらす事業基盤を強化」とあります。主な顧客は株主でもある日本製鉄などの鉄鋼業界だと思いますが、どのように収益を拡大するつもりですか。

次ページでは、山中社長が大株主である日本製鉄・日本郵船との関係性について語る。