一方で、消耗戦を回避しようにも、有機ELなどの技術に乏しく、もともとテレビ用液晶への収益依存度が高い台湾勢は、業績が急速に悪化している。
台湾大手の友達光電(AUO)と、ホンハイグループの群創光電(イノラックス)の両社は、15年10~12月期にそろって営業赤字に転落。AUOはテレビ用液晶が全体の49%、イノラックスは52%を占めており、1平方メートル当たりのパネル単価は1年で3割近くも落ちた。工場の稼働率は平均で5割を割り込んでいるとみられる。
起死回生を狙って、スマートフォン用パネルでの受注拡大を目指し、AUOは中国・昆山に6世代の工場を、イノラックスは台湾・高雄に同じく6世代の工場を設けるが、カギとなるLTPS(低温ポリシリコン)の生産技術面での劣勢もあり、視界不良が続く。
三国時代、魏の張遼は圧倒的に少ない軍勢ながらも、巧みな戦術によって孫権を追い込んだ。しかし、ディスプレイ業界は、シャープがそうであったように、資金力と体力で劣る企業が、技術優位性だけで勝ち残れるような業界でないことは明らかだ。
液晶に限らず、国家ぐるみで過当競争を仕掛けられたとき、国内産業の競争力をどう維持・向上させていくか。その明確な絵図を、日本はまだ持ち合わせていない。