左、株式会社新丸正代表取締役社長の久野徳也氏、右が今回、お話を伺った常務の柴田一範氏

「2009年から堅魚屋という自社ブランドを立ち上げ、一般消費者向けの事業もはじめました。新しい商品提案も色々としていますが、それでも業務用が9割ほどの比率です。当社ではめんつゆやだし入り味噌などお客様の用途に応じて都度、かつお節の作り方から変えています。これは原料から一貫生産しているからこそ可能なことです。例えば和風のカップ麺って最近、ありますよね。あれはお湯をさした瞬間に香りが立つように作ります。だし入り味噌の場合は白く仕上げなければいけない。これは添加物を使ったりするのではなく、作りこみのなかで工夫して作り込んでいくのです」

 日本鰹節協会の分類ではかつお節は「荒節」とそれにカビ付けをした「枯れ節」の2種類にわかれるが、実際は様々な作り方のかつお節がある。まず、それが驚きだった。

「冷凍で入ってくるカツオの解凍温度を変えることでイノシン酸分解をコントロールし、コクを強くしたり、旨味を多くしたりという風に、旨味の構成を調整することができます。切り方でも味は変わります。昔は近海のかつおを加工していたので、春先は忙しく、夏場はカビ付け、冬場は暇で道具の修繕というのが1年のサイクルでしたが、今は漁場が太平洋中西部に変わり、通年かつおをとっているので、そういう意味では、原材料の味は安定してきたともいえます」 

──冷凍カツオの価格が上がっているという話を聞きましたが影響はありますか?

「すごくありますね。かつお節は原材料費が8割なんです。2割が加工賃、薪代とか人件費なので値が上がる影響は大きいんです。削り節原料は相場に連動して売ることができるのですが、小売店などで売られている削り節は値段を変えるわけにはいかないので……ただ、色々な商品を出していますが、あくまで中心はかつお節。そのコンセプトはしっかりと守っています」

手間も時間もたっぷりかけた
新丸正「かつお節」ができるまで

かつお節製造は基本的には手作業で、利益も出づらいと言う

 かつお節の文化を守る。言葉では簡単だが、製造は大変手間がかかる。実際にかつお節の製造工程を見学させていただいた。

 かつお節工場は煙と熱気に満ちている。まずは流水解凍したかつおを処理していく生切りという工程である。変わった形の包丁を使いながら器用に卸していく。

「こうした作業を手で行うのは技術の継承という意味もあります。奥で作業している彼は入社して1年目ですが、若い人がこうした作業して、覚えてくれるのはありがたいことですね」

 本枯節にするかつおは、こうしてきれいにおろし、セイロに並べていく。この工程がそのまま製品の形に影響するので、作業は丁寧だ。煮熟する際にセイロに魚の身が触れて身割れするのを防ぐために魚の中骨で保護するなど細かなところに気を配っていた。

 煮たカツオの身は水のなかで小骨を除去した後、中落ちからとった身などで形が整えられる。傷などがあるとそこからカビが入ってしまうからだ。その後、蒸して殺菌し、焙乾の作業に移る。

 荒節になるかつおも基本的には同じで頭を落として煮熟した後、水のなかで中骨や小骨を除去する。火を通した身を崩さずに骨をとるには手作業しか方法がない。