JR東京駅発の上越新幹線「たにがわ」に乗って約50分。上野、大宮、熊谷の次に停車するのが、本庄早稲田駅だ。
同駅の開業は2004年3月にまでさかのぼるが、駅周辺には商業ビルや住居などがなく殺風景。本格的な道路整備がつい最近始まったばかりという雰囲気だ。駅の北側にはUR都市機構、埼玉県、本庄市が「早稲田本庄駅周辺土地区画整備事業」の大看板を掲げている。
また同駅南口には2012年、関東地方を中心に事業展開している大手ホームセンター「カインズ」の本社が建つ予定だ。さらにその先には、深い森が広がっている。そこは「早稲田大学本庄キャンパス」。このなかに日本の次世代自動車技術の“頼みの綱”がある。
早稲田大学理工学術院の紙屋雄史教授がバスの運転手に発進の指示を出した。すると、全長5.77mx全幅1.995mx全高2.83m、定員13人の小型バス「日野ポンチョ」は、その風貌と似つかわしくない急加速をした。車内で「おぉー」と、数人が驚嘆の声をあげた。
同車は「WEB-2」(Waseda Advanced Electric Micro Bus-2)。量産型ディーゼルエンジン車から改造された、「非接触給電」装置を持つ電気バスだ。
早稲田大学の電動車両研究所(=大聖泰弘・紙屋雄史両教授の研究室)では、電気自動車、プラグインハイブリッド車、超小型燃料電池車などの電動車両研究を国と民間企業と連携して行っている。そうした一連の研究のなかで「早稲田ならではの技術」が、「非接触給電」なのだ。これは、充電時にコネクターなどを使わず、完全に分離された2つの装置の間で送電する技術。その詳細については本稿後半で紹介する。
さて今回、筆者も参加した社団法人・自動車技術会主催の講習会では、太陽光発電を併設した非接触給電装置が大学外部関係者に初公開された。これは、埼玉県平成21年度「次世代自動車関連技術開発支援事業」の一環だ。早稲田大学、埼玉県、本庄市が2002年に、産学官連携による最新技術研究と地域産業の活性化を目指して「本庄国際リサーチパーク研究推進機構」を設立。同機構から地元の中小企業に事業委託したカタチだ。