自主放任と放置プレーは違う:選択肢とホンモノを見せよ
ムーギー なるほど。ほかには、どんな点で親御さんに感謝されていますか?
高宮 「やりたい!」と言ったことは、なんでもやらせてもらったことかな。サッカーやスケート、体操、ドラム……少しでも興味があれば、文字どおり「なんでも」です。もちろん、ただの「オモチャを買って」といった要求は通じないのですが(笑)。
ムーギー 好奇心を満たしたり、自分が好きで得意な分野を探させてあげるためにも、いろいろな経験をさせてあげるのは大事ですよね。結局、やってみないと自分に向いているものもわかりませんから。
高宮 あとは、父は子どもだけでは思いつけないような選択肢もたくさん示してくれましたね。例えば、高校受験の際に日本に帰ってきたのですが、どの高校を目指すかという時に、どういう仕事につきたいかって考えるじゃないですか。その際に、中学生の僕に父が仕事で接する国際弁護士や経営コンサルの話もしてくれました。この二つは大学生の頃までずっと残り、最終的に新卒では経営コンサルになりました。
子どもが「これがやりたい」と思うためには、そもそも「こういう選択肢がある」と知らないといけないわけですから、幅広く世の中にある選択肢を見せてあげることは大事なんだと思います。
ムーギー まさに、おっしゃるとおりですね。「一流の育てかた」でも、多くのアンケート回答者が、「子どもは選択肢を知らないのだから、それを広げたうえで自分で選ばせることが親の役割」と回答している人が多かったです。子どもの視野を広げる手助けをせずに「勝手に選びなさい」は、自主放任ではなく、単なる放置プレーだと本書は指摘しています。
高宮 なるほど(笑)。あと、両親は「本物」に実際触れることも大事にしてくれていました。海外にいるときは、ルーブル美術館やオルセー美術館といった「本物」が集まる場所によく連れて行ってくれて。僕は美術にまったく興味がなくて、ソファに座って本を読んでたんですが(笑)。でも、音楽は好きになったし、親としては本物を見せたうえで「自分で判断しろ」というスタンスだったんでしょう。
ムーギー うーん、すばらしい親御さんです。本書で取った「親に感謝していること」というアンケートでも、「芸術などの分野で本物に親しませることで刺激を与えてくれた」という回答が寄せられています。
高宮 そうそう、この『一流の育て方』を読んで、僕もいろいろと思い出したんです。幼稚園のころから食事もお子様ランチ一辺倒ではなく、寿司屋のカウンターに座らせてもらったり、フランス料理に連れていってもらったりしたな、と。でも、ただ「おいしいものを食べさせる」ではなく、「騒いだらダメ」とか「ナイフとフォークはこう使う」といったマナーも教えられましたし、それを守らないと連れていってもらえない。食いしん坊の僕としては、美味しいもの食べたさに必死に守るわけです(笑)
ムーギー 高宮さんをひとりの大人として扱ってくれたんですね。早い段階で本物に触れて、味覚もずいぶん養われたでしょう?
高宮 だから食べることが大好きになって、いまやこの体型ですよ(笑)。