発売3ヵ月で15万部を突破し、子育てのみならず、ビジネスやあらゆる分野のリーダーシップを伸ばすビジネス書として、異例のベストセラーとなっている『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』。本書の内容に基づき、各界のリーダーと「リーダーシップの育て方」を論じる対談編をお送りしている。
今回は、テレビ朝日の松尾由美子さんをゲストに迎えた後編。しゃべる技術のみならずタレント性も求められる、いわゆる「女子アナ」の世界で正統派として注目される松尾由美子さん。現地の人と心を通わせる災害報道や、日本文化の発信などでも独自のスタイルが評価されているが、意外にも入社試験のときから「大失敗」をしてきたという。求められるものの多いアナウンサーという仕事と、ここまでどのように向き合い、自分を高めてきたのだろうか。(構成:ふみぐら社 撮影:柳原美咲)
本日のインタビューのポイント
さて、本日はテレビ朝日アナウンサー・松尾由美子氏との対談第二弾である。
『一流の育て方』の第四章では「コミュニケーション能力の磨き方」を数多くの主体的な学生やビジネスリーダーの事例から論じている。
そこで今回は、コミュニケーション能力の最強のプロフェッショナルである、プロアナウンサーの松尾氏に「コミュニケーション能力」の神髄についてお伺いした。
光り輝くダイヤモンド読者の皆様のために、冒頭に要点を記しておこう。それはとりもなおさず、
1. 相手のことを知るためには、フィルターを通さず相手の言葉を勉強する
2. 国際コミュニケーションで求められるのは、完璧な英語より自国文化の深い理解(日本文化は一生付き合うものだから、大切に勉強したい)
3. 相手に寄り添うには、自分が相手を理解し、相手からも理解してもらうことが大事
4. コミュニケーションは、話し方などのテクニックより、本当に伝えたい情熱が大切
というポイントである。
ただ、以下のインタビューからはコミュニケーションスキルに関する内容にとどまらず、松尾氏の国際的な一面、日本文化をこよなく愛し深く勉強する姿勢、そして被災者に寄り添う姿勢から多くのことを感じていただけるであろう。
世界を知るには、まず「日本の文化」を知ること
ムーギー 前回、松尾さんは中学生の頃、英語の暗唱をずっとされていたという話をうかがいましたが、英語だけでなく中国語も伸ばされてますよね?そのきっかけは何だったんですか?
松尾 中国語に対する関心ということですよね。それは、高校生のときに新聞を読んでいて「なんでこんなに仲が悪いんだろう、私たち」って思ったのがきっかけなんです。やっぱり相手のことを知るためには相手の言葉を勉強したほうがいいんだろうなって。
ムーギー なるほど、その視点はすごく大事だと思います。なぜなら、普通は中国のことを知るにしても日本語の情報で日本側のフィルターを通して理解しようとしてしまう。それでは必ずしも現地で起こっていることや心情を正しく理解しているとはいえない。ときにはそうした報道をするメディアが偏見を助長することにもつながってしまいますよね。
松尾 そうですね。
ムーギー その点、松尾さんのようなメディア側の人が現地の言葉を学んで、現地に入ってコミュニケーションしていこうというのは、非常に有意義だと思います。国際派の松尾さんは、2008年の北京オリンピックでも現地の方に中国語でいろんな取材をされていましたよね。
松尾 そんなに私、自分で国際的だとは思ってないんです。海外で生活した経験も子どもの頃に1年ぐらいしかないですし。英語も中国語も優れてるわけじゃない。でも前提として国際理解をするのなら、まず自分の国の文化をちゃんと知っておいたほうがいいなというのはあるんです。
ムーギー たしかに、日本の文化という点では、松尾さんは漢字検定や着物検定の勉強をされていたり、今も日本酒にはまってらっしゃいますよね。
松尾 よくご存じですね(笑)。
ムーギー 私は、女子アナマニアですから(非常に真剣な表情)。
松尾 最近は海外の方がインバウンドで日本に来られることも多いじゃないですか。そのときに彼らが期待しているのは、英語でコミュニケーションが取れるというよりも、日本のことをちゃんと紹介してくれる人だったりするんです。
それなのに意外と私たち日本人のほうが自国のことを知らない。いざ海外の方から「日本のことがよくわかる場所に連れて行ってほしい」と言われても「どこだろう?」ってなりますよね。
ムーギー なりますね、たしかに。
松尾 そういった経験もあったりして、まず私たちが日本のことをちゃんと知らなければいけないなと思ったんです。それで最初に着物の勉強を始めて。アナウンサーとしてお仕事の中で着物を着ることも結構あったんです。そのときも自分は着物のことをちゃんと知ってないなと感じていましたし、視聴者の方に着物のことを伝えるためにも勉強しようと思いました。