竹中平蔵教授が「『親の教科書』といえる稀有な良書」と評し、『「学力」の経済学』著者、中室牧子氏が「どうやって子どもをやる気にさせるのか、その明快な答えがここにある」と絶賛。また、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「リーダーシップ育成の教科書として、目下最良の一冊」と称する『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』
発売わずか3ヵ月で15万部を突破し、子育てのみならず、ビジネスやあらゆる分野のリーダーシップを伸ばすビジネス書として、異例のベストセラーとなっている本書の内容から「本当にためになる」育て方の秘密を公開する。

 

「報酬」を与えて勉強させてもいい?──目先のメリットにしか反応しない子どももいる

【家庭教育アンケート】

●金銭的インセンティブがモチベーションになった
 小学生のころはテストで満点を取ると、お小遣いをもらえるシステムだったので、勉強を頑張るのは当たり前だった。おカネではなくとも、勉強をすると何かを得られるという考え方はあってもいいと思う。勉強が好きで、自主的にするのが当たり前というのが理想ではあるが。(慶應義塾大学環境情報学部Kさん)
●好きなものを買ってもらえるので頑張った
 中学までは、私が勉強である一定の成果を出すと母からほめてもらえ、さまざまなものを買い与えられた。私は母にほめてもらえること、好きなものを買ってもらえることが嬉しくて頑張った。(東京大学大学院学際情報学府Mさん)

 

どうしてもやる気が起きない子にはニンジンを──意外と多い、「報奨制度」で育てた家庭

 わが家では夫がよく、「勉強する意義」を子どもに話して聞かせていましたが、子どもたちは遠い将来の話として、他人ごとのように聞き流していました。

 このように、いくら理屈を説いても響かず、どうしても「今、勉強すること」と結びつけて考えられない子どもを勉強するよう仕向けるには、一体どうすればよいのでしょうか。

 あまりほめられた話ではありませんが、わが家で次善の策として採ったのが、「ニンジンをちらつかせる」方策です。わが家の「報酬制度」については、すでに本章の冒頭で息子がバラしてしまったので白状しますが、わが家では海老で鯛を釣る作戦が成功しました。

 私は見栄っ張りで、このような邪道な方法で子どもを勉強させたことを恥じ、誰にも秘密にしていました。ところが4人の子どもたちが通うそれぞれの進学校で、この作戦で子どもさんを勉強させたという親御さんが何人もおられたのには驚き、苦笑したものです。

 そしてアンケートを見ても、成績がいいとご褒美がもらえ、それが目的になって頑張る気になったという学生さんたちが数多くおられました。放っておいても自主的に勉強する子どもの親御さんから見れば、いささかレベルの低い教育法かもしれませんが、恰好などかまっていられません。

 よい教育を受けるための列車(進学校)に乗せるのに、なかなか自分で乗ろうとしないなら、あらゆる手を使ってでも乗せてやりたいのが親心です。いったんその列車に乗ると、同じ目的地に向かって進む仲間がたくさんいて、運転手さんたち(先生方)がぐいぐい引っ張っていってくれるのですから。

 中学受験のとき、長男は高価な熱帯魚(アジアアロワナ)と、それが自由に泳げる大きな水槽が欲しくて堪らなかった状況でした。それで父親が、その息子の足元を見て、報奨金制度の密約を結んだのです。それも試験で1位になるごとの報奨金が1万円だというので、私は驚きました。前述しました母子の二人三脚に加え、その父子密約のおかげで息子の目の色は変わり、必死に頑張ったものです。

 海老と鯛作戦がいつも功を奏するとは限りませんし、結果に報酬を与えるのか、プロセスに報酬を与えるのかという議論もあることでしょう。ただ、当時のわが家ではうまくいきました。

 ほめられた手段ではありませんが、将来のことを話してやるだけではどうにも動かない子もいるものです。何もせずに手をこまねいているよりはよかったと思っています。

 やる気が起こらない子には、子どもの性格に合った方法を探してあげることも大切です。それは小学生という早い時期ほどやりやすく、そのときの成功体験は、子どもにとって大変大きな自信になるのです。

(※この原稿は書籍『一流の育て方』から抜粋して掲載しています)