シャープにとって南京プロジェクト(記事参照)は、片山幹雄社長の掲げる「地産地消戦略」の第一歩と位置づけられており、社運を賭けたものだ。今、あえてシャープが海を渡ることにどんな意味があるのか。片山社長に聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

シャープ社長 片山幹雄
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──なぜこのタイミングで「地産地消戦略」なのか。

 「UV2A」という技術の差別化ができたからだ。液晶テレビがもっと普及するためには低消費電力でコストの安い液晶パネルが必要。これに対して開発したのが「UV2A」だ。従来より明るくコストは安い。環境にも向いている。

 今後、日本から材料や液晶パネルを送って現地で組み立てるなんて考えられない。日本でのコスト、たとえば人件費などの製造コストが今後下がることは考えにくい。関税や為替の問題もある。だから地産池消を進める。

──その地産地消戦略はシャープの培ってきた液晶パネル製造の「前工程」を海外に出そうというものだ。今まで、技術流出を嫌って日本産にこだわってきたが方針を変えたのか。

 根本は変わっていない。シャープはものづくりの会社であり、技術開発が中心の会社だ。これは変えようもない。

 世界の人口は60億人だ。だが薄型テレビ市場はわずか2億台程度。今後5億台、10億台という市場になっていくだろう。そのときにわれわれシャープがどう世界に出て行くのか。シャープ1社の力で世界制覇は難しい。世界で戦っていくためにはパートナーが必要で、今回、そのパートナーが見つかった。それが中国政府であり、南京市政府だ。

 技術に関する知的財産権について、きちんと守っていただくということは、当然パートナーにもお約束いただいている。なにもいたずらに技術を拡散しようとしているわけではない。技術力はシャープの生命線だ。