酒を飲むと、気分が良くなり、楽しくなる。気が大きくなり、全能感が味わえる。普段よりも積極的な性格になって、いろいろな人と仲良くなれる。酒のない人生なんて、なんて空虚で華のないものだろう。死んだも同然だ。筆者は、そう強く思い込んでいた。

 しかし、実際はそうではなかった。もちろん、酒をやめた直後は手持ち無沙汰になったり、酒への渇望感でイライラしたりするが、慣れてくればなんてことはない。飲んでいる人のテンションが上がっているのだから、それに合わせて自分も少しギアチェンジすればいいだけのことだ。もともと酒の場に慣れているので、楽しみ方は身についている。

 むしろ、最近では、以前より酒の場を楽しめるようになった感じすらある。記憶が鮮明に残っているため、楽しい思い出の余韻は翌日まで続くし、気づかぬうちに失態を犯しているのではないかと気を揉むこともなくなる。人の話を、じっくり聞けるのも楽しい。

 ついでにいうと、先日あるDJパーティーに参加した時、ノンアルコールビールを飲んでいたのだが、2本目を注文したところ、もう品切れとのことだった。周りを見渡してみると、ノンアルコールビールの瓶がそこかしこのテーブルに置かれていた。思っていたより、多くの人が酒を飲まずにその場を楽しんでいたのだ。これも一つの発見だった。

・「酒を飲むと、なにかが降りてくる」は幻想

 筆者はライターを職業にしているため、常に企画を出さなければいけない。別に、ライターではなくとも、なんらかのアイディアを求められる仕事に就いている人も多いと思う。

 そのプレッシャーもあり、酒を大量に飲んでしまうことが度々あった。酔っ払った頭に突然、企画が「降りてくる」と信じていたのだ。しかし、そうやって思いついた企画は、翌日に冷静な頭で考え直してみると、たいてい使い物にならない。ならば、初めから素面の頭で考えたほうが効率もいいし、そのほうがより尖った企画が出てくると感じる。

 長年、脳がアルコール漬けだった著者にとって、素面の頭のほうがよっぽど「狂気」だ。酒になにか「特別なもの」を求める趣向の人は、そう発想を転換してみてはいかがだろうか。

 また、人との会話の中で生まれるアイディアも同じである。筆者の経験によれば、「なにか面白いことを一緒にやりましょうよ」といった酒の場での話は、たいてい「面白いこと」にはつながらない。もっとも、片方が素面であるならば、アイディアがしっかり記憶され、その後の展開に変化が見られるかもしれない。今後はそれを楽しみにしている。