最近注目されている経済政策
バーナンキ元FRB議長来日がきっかけ

「ヘリコプターマネー」はなぜ“劇薬”と言われるのか最近、注目されている経済政策ですが、どこが問題なのでしょうか?

 最近、"ヘリコプターマネー"なる経済政策が注目を集めている。そのきっかけは、7月12日のバーナンキ元FRB議長と政府関係者の会談である。7月14日には、安倍首相の経済ブレーンの一人がバーナンキ氏と永久債の発行を議論していたことが報道され、今後の経済対策への期待から円安、株高が進んだ。

 バーナンキ氏は、ヘリコプターマネーに積極的な考えを持つことで知られてきた。安倍首相が「政策を総動員する」と言い続ける中で、今回、会談の報道が出たことで「わが国でヘリコプターマネーが始まる」との期待が高まったことは間違いない。

 ヘリコプターマネーの元々の意味は、政府がヘリコプターから国民に対してお金をばらまくことを意味する。実際には、政府が国民に現金や商品券を給付することで、国民の心理を好転させ、消費や投資が増えることでデフレからの脱却を図ることが狙いだ。

 確かに、わが国の経済政策を見ると、財政・金融政策ともに手詰まり感が漂う。それだけに、ヘリコプターマネーによって積極的に現金などを国民に給付すれば、消費の喚起、景気の回復、さらには金融市場でのリスクテイクを促進する効果は期待できるだろう。

 しかし、問題は、ヘリコプターマネーには大きな弊害も伴うことだ。中央銀行による国債の引き受け=財政ファイナンスを進めると、政府支出に歯止めが効かなくなる。過去の歴史を振り返っても、最終的に高率インフレ=ハイパーインフレにつながる懸念が高い。

 その意味では、ヘリコプターマネーは、一種の"劇薬"と考えた方がよい。劇薬の副作用で、わが国経済が大きく混乱する恐れがある。一時の効果を狙って、後になってその何倍もの苦痛を味わうことになりかねない。

1969年からあった「ヘリマネ」議論
かつての「地域振興券」も類似の政策

 ヘリコプターマネーとは、政府が対価を求めることなく、国民に現金などを給付して需要の喚起、景気の回復を目指す経済政策だ。経済理論から考えると、金融・財政政策を一緒に行う政策と考えると分かりやすいだろう。

 ヘリコプターマネーの議論が始まったのは最近のことではない。その起源は1969年にさかのぼる。米国の著名経済学者ミルトン・フリードマンが、論文『最適貨幣量』の中で、「政府がヘリコプターを飛ばして上空から新しく刷った紙幣をばらまき、直接、国民にお金を配るとどうなるか」との議論を展開したことが出発点だ。