2007年に米国を追い越し、世界一の二酸化炭素(CO2)排出国になった中国が、2008年も第2位の米国との差を広げて、世界一になりました。米国がリーマン・ショックなどの影響で前年の57.6億トンから56億トンと2.9%排出を減らしたのに対し、中国は前年の60.8億トンから65.5億トン(7.8%増)にまで排出量を増加させ、2007年に自らが記録した(一国の)CO2排出量の過去最高値を更新したのです。
いまや中国のCO2排出量は、世界全体(293.8億トン)の22.2%を占め、19.0%を占める第2位の米国と合わせると、この2ヵ国だけで実に世界のCO2排出量の41.2%を占めています。
一方、2008年の日本のCO2排出量は、2007年の12.4億トンから11.5億トンへと7.3%減少しましたが、これは米国同様に景気後退の影響によるものであり、素直に喜べるものではありません。ちなみに日本のこの数字は、世界全体のCO2排出量の3.9%に過ぎないことは、既に第17回でも述べた通りです。
日本が必死に削減しても
世界の1%にも満たないという現実
先日、温室効果ガスの排出量を「2020年に1990年比25%削減する」との中期目標を明記した『地球温暖化対策基本法案』が、今年6月に廃案となった内容のまま閣議決定され、今臨時国会で議論されることになりました。それに対し、経済界からは早くも反対の声が上がっています。
「2020年に1990年比25%削減する」といっても具体的なイメージがわきませんが、削減実数(量)を数字で示すとイメージしやすくなると思います。1990年の日本のCO2排出量は12.6億トンでした。25%削減ということは、9.4億トンまで排出を削減するということになります。2008年のCO2排出量が11.5億トンですから、2008年対比では2.1億トンの削減が必要となるのです。
しかし、2.1億トンという削減目標は、2008年の世界全体の排出量293.8億トンの1%にも満たない数値です。しかも、中国がわずか1年で増やしたCO2排出量が4.7億トンですから、その半年分にも届きません。中国は1990年以降、CO2排出量を43.1億トンも増やしています。2008年の排出量換算で考えれば、実に日本の3.7倍です。
もちろん、地球温暖化対策において、国内の枠組みを議論することは確かに重要なことですが、国際的な枠組みなくしてこの問題はもはや語ることができず、国内だけの議論では残念ながら“焼け石に水”の状況なのです。
前回の第26回で『環境問題を「地球温暖化」だけで語ったツケ』という話を書きました。ちょうどいま、名古屋で『生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)』が開催されていますが、生物多様性の議論に代表される通り、「環境問題」は人間だけの問題でなく、生態系を含めた議論が必要です。