遺伝病のペットが日本で放置されているのはなぜか先天的な病気を持ってると知らずに“家族”として迎え入れている場合も(写真は本文と関係ありません)

3頭続けて早世したミニチュアダックス
飼い主には「飼う資格がない」のか

「僕には犬を飼う資格がない」

 職場のペット談義の輪からそっと離れて、TMさん(50歳)はつぶやいた。5年ほど前のことだ。聞けばそれまで3頭のミニチュアダックスフンドを飼い、すべて4年も経たないうちに死なせてしまったという。

「普通の飼い方をしていたつもりだけど。何かに祟られているのかもしれないなぁ」

 悲しげな独白に耳を貸しつつも私は内心(人間が食べる味の濃いものを与えるとか、間違った飼い方をしていたんじゃないの?)と疑っていた。

 だが今回、ペットの遺伝病について取材してみた結果、3頭の犬たちの早世は、飼い方のせいではないかもしれないと思うようになった。

 きっかけは、2016年5月26日の 朝日新聞朝刊に載った記事。

「ペットショップで買った犬が病気だった――。そんなペットに関するトラブルが後を絶たない。犬猫の飼育頭数が減少傾向に転じ、犬の販売頭数も減っているとされるが、国民生活センターに寄せられる相談件数はなかなか減らない」

 …で始まり、その一因は「高リスク繁殖」にあり、「見た目のかわいさだけを考えて先天性疾患のリスクが高まるような繁殖が行われている。消費者としては、様々な疾患が見つけやすくなる生後3ヵ月から半年くらいの子犬や子猫を買うことが、自己防衛につながるでしょう」という獣医師のコメントで締められていた。

「リスクが高まるような繁殖」って? 消費者は、飼わなければ自己防衛できるとして、先天性疾患(遺伝病)を持ったペットたちはどうなるの?

 気になって調べ出した。


先天性疾患とは、出生時に疾患を有する場合で、遺伝病(遺伝性疾患)も含まれる。
遺伝病は、親の形質が子孫に伝わる病気。
その形質は出生時に現れずに、時間の経過とともに現れることもある。
病気は、治療を必要としない軽いものから、死に至る重度のものまである。