こうした傾向は日本でも同様で、2000年に行われた調査結果では、40代から男性の早朝覚醒が増え始め、50歳以上から著しくなることが判っている。女性の場合は、朝型化の傾向が緩やかなので、60代、70代でも変わらず、夜型でいる場合が多いらしい。

 睡眠の名医は次のように言う。

「夫婦の場合、夫が朝型化して就床時間が早くなり、朝型化の起こっていない妻がそれに合わせた生活をしようとすると、妻が自然な入眠時刻より早く床につくことになり、入眠困難に陥ることがあります。実際に女性で入眠障害が増加するのは、50代からです。原因は様々ですが、体内時計のリズムとの不一致によるものが、多く含まれている可能性があると私は思っています」

 どうやら加寿子さん夫婦は、典型的な事例のようだ。

睡眠不足はさまざまな病気の原因
夫婦の家庭内時間差問題は要注意

 さて、夫婦の家庭内時差問題、放置していても大丈夫なのだろうか?

 もちろん、大丈夫なはずがない。

 人間はだいたい人生の3分の1を睡眠に費やす。睡眠不足が健康に及ぼす影響は深刻だ。

「近年、睡眠不足や質の悪い睡眠は認知症を招く、という研究結果が注目されていますが、そのほかにも、がん、高血圧、心臓病、うつ病など、睡眠が影響している病気は多々ありますよ」

 前出の名医は警鐘を鳴らす。

 例えば、深夜勤務の女性は乳がんや大腸がん、男性は前立腺がんの発症率が高いという研究データが報告されている。

 がん発症の原因として着目されているのは、睡眠とホルモン分泌の関係だ。

 睡眠を促すホルモンである「メラトニン」には、性ホルモンの分泌を抑制する作用がある。不規則な睡眠によってメラトニンの分泌が減ると、性ホルモンの分泌が増加して、乳がん、子宮頸がん、前立腺がんを発症しやすくなってしまう。

 一方で、深い睡眠に入った時に分泌が高まる「成長ホルモン」には、傷ついた細胞を修復する働きや免疫力をアップする働きがある。

 つまり睡眠不足は、抗腫瘍作用がある「メラトニン」と、免疫力を高めてくれる「成長ホルモン」という2つの大切なホルモンの分泌を悪くし、がんになるリスクを増大させるというわけだ。

 自分の爽やかな朝の陰で、妻の健康が害され、「早世の危機」が進んでいるとしたら、それでも孝博さんは早寝早起き生活を謳歌し続けたいと思うだろうか?