また、持ち家などの不動産がある場合、3年ごとに評価額を申告することになった。「ボロ家だけど住み慣れた小さな持ち家があって、とりあえず住んでいられる」という人が生活保護を申請した場合、その家の資産価値がよほど高額でない限り、引き続き住み続けることが可能だ。しかし今後は、何らかの事情で地価が上昇した場合、それが理由で売却を求められ、『転居して生活保護か、生活保護を断念して今の住まいか』の究極の選択を迫られる可能性もあるかもしれない。その問題が表面化するのは通知から3年後、2018年4月以後のことになる。

 生活保護は貯金を前提としていないが、貯金をすること自体は禁じられていない。生活保護の保障する「健康で文化的な最低限度」は、現金・現物の給付で実現されるのだが、それらの給付ではカバーされない部分が、実際には数多く存在する。このため、

「最低限度の生活を前提とした保護費で、最低限度以下の生活をして貯金を作り、生活保護でカバーされない何かに備える」

 が必要になる。すなわち、生活保護制度が現在すでに「健康で文化的な最低限度」を保障できておらず、穴だらけになっているため、生活保護で暮らしている各人各世帯の自助努力で「穴」を塞ぐ必要があるということだ。

 その、生活保護の「穴」を塞ぐために、爪に火を灯して作った貯金を、「資産申告書」で申告することになった。あくまでも任意、生活保護の人々の協力によって提出するものであるはずなのに、事実上の強制が行われていたり、「ケースワーカーの目の前で財布の中身を全部出させられた」という屈辱的な扱いが行われていたりする。また、「生活保護を受けずに暮らせる貯金があるから」という理由で、生活保護の中止・打ち切りも行われている。その人々は、せっかくの貯金を使いきったら、また生活保護を申請するしかない。すると、また「貯金ゼロ」からのスタートだ。

 どうしても、賽の河原で石を積んでは鬼に崩される子どもたちを連想してしまう「資産申告書」問題に関し、ケースワーカー経験を持つ長友祐三氏(埼玉大学教授・社会福祉学)、東京都内の生活保護の現場で働く現役のベテランケースワーカー・田川英信氏、支援団体の立場で生活保護の実態を深く知る安形義弘氏(全国生活と健康を守る会連合会・会長)に、現状・問題点・解決策を説明していただいた。

「資産申告書」によって起きている
生活保護ケースワーカーの“横暴”

「必死で貯金したら生活保護打ち切り」の理不尽2016年6月、ケースワーカーを主対象とした社会保障制度の勉強会にて。手前から長友氏・安形氏・田川氏。この日のテーマは、資産申告書問題だった。3人の重苦しい表情は、内容のせいであろう
Photo by Yoshiko Miwa

 生活保護で暮らす人々に近い立場の安形(あがた)義弘氏は、実際に起こっている「生活保護打ち切り」や、一部の福祉事務所や生活保護ケースワーカーの「横暴」としか言いようのない扱いを憂慮する。

「ケースワーカーが訪問調査のときに、資産申告書の記入を求め、その時、財布の中身を全部テーブルに出させられた方がいます。また、預金通帳を見せたところ、『タンス預金しているのと違うか』『バイクを買い換えたのと違うか』と詮索された方もいます。強制ではないと言いながら『何も不正なことをしていないのなら、提出しなさい』と言われたという方もいます」(安形氏)