米デルタ航空が東京(成田)~ニューヨーク路線から撤退する。看板路線からの撤退は、同時に、これまでアジアでの拠点としてきた成田空港離れを象徴するものとなった。米大手キャリアーが見せたアジア戦略の大転換で、日本の航空・空港政策の在り方が問われている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

デルタが東京~NY線撤退、成田空港離れが加速中これまで成田空港にアジアでの拠点を築いてきた米デルタ航空だが、今冬以降、成田路線は大幅に減少する
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 2014年春に大きく進展した羽田空港の国際化。発着枠の増加に伴い、それまで限定的だった昼間時間帯の国際線が増え、欧州や東南アジア路線が一気に拡大した。

 ところが、米国路線だけは、このタイミングで就航しなかった。米国の航空政策に強い影響力を持つデルタ航空が、羽田空港の部分的な開放に異を唱え続けたためだ。

 それが今年2月、6年間棚上げになっていた日米航空交渉がついに合意に達した。そして、欧州やアジア路線に遅れること2年半、今年10月下旬から羽田~米国路線が1日10便就航、デルタは米航空会社としては最大の2枠を獲得し、羽田~ロサンゼルス、ミネアポリス路線を開設する予定だ。

 しかし、多くの航空業界関係者を仰天させたのは、デルタが同じタイミングで、成田~ニューヨークという“看板路線”から撤退するという決断だった。

 実は、成田~ニューヨーク路線は、需要が多いぶん競合も激しい。12年秋には全日本空輸(ANA)も1日1便から2便に増便するなど供給過剰にあり、いまではさほど“もうかる路線”ではなくなっていた。

 これに追い打ちをかけたのが、今回の羽田増枠に伴う、ANAの羽田~ニューヨーク路線開設の動きである。都心に近くビジネスマンが好む羽田路線が就航すれば、成田路線はますます不利になる。赤字になりかねないと、早々に撤退の決断に至ったというわけだ。

パートナー不在と
機材技術の進展で
直行便に切り替え

 “羽田開港”への抵抗、看板路線からの撤退──。こうした行動からは、デルタの日米路線における苦戦ぶりがうかがえるが、その背景にあるのは日本におけるパートナーの不在である。

 太平洋路線では、ユナイテッド航空はANAと、アメリカン航空は日本航空(JAL)と、それぞれ共同事業を行っている。今回の発着枠の割り当てでデルタは2枠だが、ユナイテッド1枠+ANA3枠=4枠と、アメリカン1枠+JAL2枠=3枠を相手に闘うことになる。