バイオバンクで復興?
最初はピンとこなかった

東北大が復興策に「ゲノム医療のデータ蓄積」を選んだ理由写真はイメージです

 東日本大震災から7年。被災地沿岸部は依然、土木工事やら建設工事が続き、地域住民の生活再建はあまりが進んでいるようには見えない。

 人口流出への歯止めはかからず、特に被害が甚大だった南三陸町(宮城県)では、震災前の2011年2月末には1万7666人だった人口が2018年2月末には1万3207人にまで減ってしまった(データは南三陸町公式HPより)。

 このままだと、あと20年くらいで誰もいなくなる計算だ。

 そんなわけで「復興政策は大失敗だったのでは」という声も方々から聞こえてくるが、なかには着々と前進し、成果をあげている復興事業もある。

 東北大学が中心となり、東日本大震災被災地の復興に取り組むために作られた『東北大学 東北メディカル・メガバンク機構』だ。文科省・復興庁が推進する国家プロジェクトでもある。

 国家プロジェクトと聞くと、「被災地のことを何も知らない役人が、復興支援を口実に、予算を使うために企てた計画なのでは」と、疑わしく感じる人も多いだろう。

 実は筆者も、疑いの目を向けていた。

 プロジェクトの中心は、住民への長期間健康調査(血液・尿の採取あり)をもとにバイオバンクを作り、遺伝子研究等を行い、未来の医療に役立てようというものなのだが、バイオバンクがどうして復興に役立つのかが、まるでピンとこなかったからだ。

 だがある取材で、同機構の機構長、山本雅之氏の話を聞いて、認識はガラリと変わった。そもそもこのプロジェクトは、中央官庁の発案ではなく、震災直後の現場で奮闘する、医療関係者たちの思いから誕生したものだったのだ。