時価総額で世界1位まで上り詰めたアップルは、iPhoneという大ヒット商品で築き上げた高収益体質をいつまで保てるのか。過去になかった疑問が市場を取り巻いている。

 過去最高記録には間違いないのだが──。

 1月23日、米IT企業大手のアップルは、最も売上高が伸びるクリスマス商戦を含む2013年度第1四半期(12年10~12月期)決算を発表した。売上高は545億1200万ドル(約4兆9061億円。1ドル=90円換算)、純利益は130億7800万ドル(約1兆1770億円)と、いずれも過去最高を記録した。

 わずか3カ月で1兆円以上を稼ぎ出す企業は、世界のハイテク業界でも他にない。

 しかし、である。市場では高い収益力が、ついに頭打ちになったとの見方が広まった。発表翌日にはアップル株が売り込まれ、一時30%以上も下がった。

 というのも、実は純利益は前年同期比でわずか「0.1%の微増」と横ばい。快進撃を続けてきた利益成長にストップがかかったのは、03年4~6月期の減益(前年同期比)以来、なんと9年半ぶりの“事件”だったのだ。

 もっとも、売上高は18%と伸びている。それに対し“必要経費”である販売費および一般管理費は売上高比7%と、前年同期とほぼ同じで、ギリギリまで絞り込まれている。つまり、人件費が過剰になったり、販売体制に問題が生じたわけではない。

 にもかかわらず利益が伸びなかったのは、ひとえに製品原価が上がったことが原因だ。粗利益率は、前年度ピーク時の47.3%から38.6%へと、大きく下がったのである(図(1))。