リコー社長 近藤史朗
撮影:住友一俊

 2009年3月期の業績を下方修正すると決まって、市場関係者は「どれだけの人員を削減するのか」「生産体制を見直すのか」と聞いてきた。

 リコーは1990年代以降に、約4000億円をM&Aに投下したが、その対象は「欧米市場の販路」「プロダクション印刷」に絞っており、やみくもに事業を拡大させてきたわけではない。将来の果実のために着実に布石を打ってきたわけで、クビ切りや生産拠点の廃止を行なう必要性を感じない。

 だからこそ、強気過ぎるといわれようが、中期経営計画の最終目標値も、実質的には変更しなかった。11年3月期は売上高2兆3000億円(前回発表時は2兆5000億円)、営業利益1700億円(同2500億円)としたが、その修正幅は為替変動によるもので、世界的な事務機市場の需要減を織り込んでいない。

 昨年買収した米事務機販社アイコン・オフィスソリューションズの買収金額(1700億円)が売上高4400億円、負債1000億円に対して高いと批判されるが、それは的を射ていない。今だから話せるが、キヤノンのみならず、韓国サムスン電子も買収に名乗りを上げており、泥仕合になる前に決着をつけた。買収から半年で他社製品からの切り替えが進み、アイコンの売上高のうちリコー製品が占める構成比は3割から9割へと上昇した。統合作業は順調だ。

 この年末には、欧米市場の需要が回復すると読んでおり、絶対に機会ロスを起こさないような生産体制を今から準備している。(談)

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)