特定秘密保護法案の審議が始まる。自民党は今国会で成立を目指す。28年前、中曽根政権で廃案となった秘密保全法制(当時はスパイ防止法と呼ばれた)が、安倍首相の下で制度化されようとしている。役所が勝手に機密を決め、未来永劫封印することも可能で、国民の「知る権利」を無視した法案だ。「スパイ」から秘密を守ろうとした中曽根政権とは違い、今回の狙いは内部告発者とメディアを封ずることにある。

 安倍首相は「日本を守るため」外交・安保の司令塔・国家安全保障会議(日本版NSC)を設けて、米国や英国と軍事情報を共有するという。それには日本から機密が漏れない仕組みが必要というのだ。

「あのこと」はどうなっているか

 テロ対策や中国・ロシアの情報を米国からもらうには機密法制の整備が欠かせない。もっともらしいが、「あのこと」はどうなっているのだろう。

 米国の諜報機関がドイツのメルケル首相やフランスのオランド大統領など友好国の首脳まで盗聴していたことだ。米国は「今はやってない」と逃げながらも、過去の盗聴は認めた。友好国の首相と笑顔で肩を抱き合いながら、裏でそんなことがありなのか、と驚いた人は少なくないだろう。

 政府は「日本は問題なし」という。本当だろうか。メルケル首相は私用電話まで盗聴されていた。安倍首相の私用電話は聞かれてはいないのか。普通に考えれば「盗聴されている」はずである。だが日本政府から抗議の声は上がらない。理由は3通り考えられる。

 ①盗聴されていない。
 ②盗聴されているかどうか分からない。
 ③盗聴されてもアメリカに抗議できない。

 ①の盗聴が行われていない、としたら米国にとって日本の政治や政治家は「盗聴に値しない」と判断されている、ということだろう。首都が他国の軍隊に囲まれている世界に稀な国柄だ。盗聴しようと思えばすぐできる。していないなら日本の首相は忠実な子分と見なされている、ということではないか。