菅義偉が今こそ伝えたい…猛反発された「特定秘密保護法」が国防・安保にもたらした劇的効果特定秘密保護法について討論する安倍晋三総理(当時、2013年12月撮影) Photo:AFP=JIJI

「政権批判で逮捕」などといった、誤解に基づく全く根拠のない反対論に見舞われてしまった「特定秘密保護法」。施行から約9年たった今こそ、同法が日本の国防や安全保障の面にもたらした劇的な効果についてお伝えしたい。(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)

誤解に基づく反対論が飛び交った
特定秘密保護法の施行から9年弱

「米軍の輸送機をスマートフォンで撮影したら逮捕される」

「政府に情報公開を求めると、『情報漏洩をあおった』と処罰される」

「政権を批判する表現のある映画が作れなくなる」

 こうした誤解に基づくあらゆる反対論が飛び交うことになった「特定秘密保護法」。同法が成立したのは2013年12月。翌14年の12月から施行され、早いもので現在までに約9年の月日が経過している。

 特定秘密保護法は、あくまでも「公務員」に適用されるもので、しかも、国家公務員法上の秘密の中でも、特に外交・防衛やテロ情報など、安全保障に関わるものを対象にしている。

 そのため、一般国民の研究や創作活動、報道機関の取材には何ら影響はない。当然、米軍輸送機をスマホで撮影しても、政権批判の映画を作っても、罪に問われるわけがない。

 そのことは法案可決前にも繰り返し説明したことだが、9年近い月日がたった今、改めて、それが事実であったことを多くの方にご理解いただけるものと思う。

 特定秘密保護法は、前回の本連載『「日本人の命が懸かっているのに…」菅義偉が、官僚の“悪しき先例主義”の打破を誓った日』で触れた「国家安全保障会議設置法」と同時に成立した。

 公務員が扱う情報を管理・保護するための厳格な仕組みを整備する法律である特定秘密保護法は、やはり国家安全保障会議(NSC)設置と同様、ますます流動化・緊迫化する国際情勢の下で日本の平和と安全を守っていくために何としても必要とされた法律だった。

 従来、日本の公務員には法律上の「守秘義務」が課されてはいる。しかし、「どの職にある者がどの程度の秘匿レベルの情報に触れてよいか」といった具体的なルールが定められていなかった。

 仮に国家の安全保障を左右するような重要な情報であっても、その漏洩について、最高で懲役1年または50万円の罰金という罰則しか定められていなかったのである。

 そのため、米国を含む友好国からは折に触れて、「日本政府による軍事機密や安全保障上特に重要な情報の保護の水準は十分ではない」との指摘がなされてきた。

 こうした事情から、安全保障上の機微な情報について国際常識に沿った取り扱いのルールを明確に定め、米国を含む諸外国と、質の高い情報交換を、より緊密に行えるようにするのが喫緊の課題となっていたのである。