企業経営におけるITの活用は、業務の自動化といった局所的な活用から、内部統合、業務プロセスや事業ネットワークの再構築、事業ドメインの再定義へと進展してきた。最近ではインターネットやブロードバンドなどの発展によって、ITの活用は新しい局面を迎えている。

ITの発展と活用方法の拡大

 IT活用の進化の過程は以下に示す6段階にまとめることができる。ITの活用を検討している企業は、市場環境や競争環境を踏まえたうえで、自社がどのステージのIT活用を必要としているかを見極め、適切に導入する必要がある。

■第1段階:局所的応用

 ITは業務単位で導入されることが多い。最初に導入されるのは経理部門であり、手作業で行っていた給与計算をコンピュータで行うようになる。そしてその後、自動化が可能な他の部門へと広げていき、購買、生産、販売など企業の主要業務に適用していく。この段階では、ITは個別業務でのコスト低減やサービス向上、スピード改善などをもたらす。企業は事業目標を明確にするとともに、ITを活用できる分野を認識しなくてはならない。

■第2段階:内部統合

 社内の多くの業務にコンピュータが使われるようになるにつれ、ITの利用は現場業務から管理業務へと拡大する。財務や経理、生産、販売、人事など企業経営に必要な管理情報を提供するには、各業務で扱われる情報を統合し、共有化する必要がある。企業全般にわたる情報システムを情報部門だけで処理するには限界があるので、利用部門が自分の仕事を自分でシステム化するEUC(End User Computing)などが用いられる。企業は情報の内部統合についての理念を明確にすることが重要だ。この段階では、CIOの必要性も高まってくる。

■第3段階:事業プロセスの再構築

 既存の事業プロセスはITが発達する以前に構築されたものが多く、ITの効果を最大限発揮させるには、ビジネスのやり方そのものを変革しなければならない場合もある。ITを活用して事業プロセスを再構築することによって、市場における地位の向上が実現する場合もある。