私立大学が付属中学を今からつくる理由
20世紀終わりの数年間、本郷・駒場と並ぶ三極構想の一環で、既存の研究施設を移すなどして東京大学柏地区キャンパスの整備が進んでいった。2005年につくばエクスプレスが開業、つくば学園都市よりも東京に近い千葉県北部エリアが、一大文教地区へと変貌を遂げてきている。三井資本による「流山おおたかの森」周辺の開発が象徴的だが、JR常磐線と合わせて、沿線にある柏市と流山市には子育て層が移り住むようになった。
団塊ジュニア層が進学する以前から、沿線には私立大学の付属中高が新設されていった。中学設立が古い順に挙げると、光栄VERITAS(1983年中高)、江戸川学園取手(1978年高校、87年中学)、芝浦工業大学柏(1980年高校、99年中学)、専修大学松戸(1959年高校、2000年中学)、麗澤(1935年高校、2002年中学)、二松學舍大学附属柏(1969年高校、2011年中学)、東洋大学附属牛久(1964年高校、2015年中学)といった具合に、21世紀に入ってから付属の中学を設立した学校もあることに気付くだろう。
少子化という逆風の中、2023年に中学を新設するのが流通経済大学付属柏である。付属高校が設立されたのは1985年のことで、その間38年の隔たりがある。ライバル校からは、「専修大学松戸の受験層に、別の選択肢があることを示したのではないか。両校ともスポーツが盛んで、運動部でも頑張りたいという層にもアピールしているようにも思う」という感想も伝わってくる。
千葉県では、23年が15歳人口のピークとなるため、中学の段階から生徒を確保していきたいという思惑が背景にはありそうだ。22年の高校受験者数を見てみると、専修大松戸の3215人は飛び抜けているものの、二松學舍大柏が1342人、高校だけだが日本体育大学柏の1368人と、流通経済大柏の1188人を上回る人気校が周辺にある。
12月1日午前に第一志望入試で50人を募集する点は、千葉県にある学校としては一般的な対応である。60人を募集する第1回は、千葉私立御三家で千葉市美浜区にある渋谷教育学園幕張と昭和秀英と同じ1月22日午前に4科で設定した。解禁3日目となり、他校と併願しやすい。
第2回は専修大松戸(第2回)と同じ26日午前に4科で設けており、併願先として競い合うことになりそうだ。第3回は26日、第4回は2月4日午前にそれぞれ2科で設定、入試会場は流通経済大学の新松戸キャンパスで実施予定となっている。
他にも、つくばエクスプレスの流山セントラルパーク駅前には、暁星国際流山幼稚園と小学校がすでにあるが、東洋学園大流山キャンパス跡地に暁星国際の中学を設立する構想が浮上しており、このエリアでの中学受験ブームはこの先も継続しそうな様相である。
東京では、人気の世田谷区に生まれる新たな付属校への人気が高まりそうな勢いにある。この3月31日、明治大学は和泉キャンパスに近い日本学園と正式に系列校連携に関する協定を締結した。26年から男子校の日本学園は共学化して、「明治大学付属世田谷」に校名変更する。その3年後の29年の入学生から、内部推薦により卒業生の7割程度が明治大学に進学できるようにしていくことになる。
明治大学付属明治は9割程度、明治大学付属中野八王子と明治大学付属中野は8割台がすでに内部進学している。23年に日本学園中学に入る男子は、6年後に明治大学に進む割合がこれら付属校に準じることになるわけだ。
日本学園では圧倒的に高校からの入学生が多く、中学の募集人員は200人あるものの、実際の入学者数はその1割程度にとどまっていた。23年の募集要項は夏休み明けに公表されることになりそうだが、いまから受験者数の激増が予想される。