トヨタ・GMの合弁工場NUMMIの取得に名乗りを上げたフィスカー(Fisker Automotive) は、2007年9月創立の米ベンチャー企業。プラグインハイブリッド車「カーマ(Karma)」(写真)を2010年から販売する予定だ。 |
世界の自動車産業界が大転換期にある今、またしても「にわかには信じ難い話」が浮上してきた。
トヨタ自動車は2009年8月28日、「2010年3月生産分をもって、米カリフォルニア州フリーモント市におけるGMとの合弁事業であるニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング(New United Motor Manufacturing Inc./NUMMI) へのカローラ及びタコマの生産発注を打ち切ることを決定した」と正式発表した。
NUMMIは1984年にトヨタがGMとの技術提携を具現化するため拠点として設立。従業員数は4700人で、現状での保有株式比率は、トヨタ50%、モーターズ・リクイディション・カンパニー(旧GM)50%である。
所在地のフリーモント市は、いわゆるシリコンバレーに隣接する地区。全米で最も物価の高いカリフォルニア州唯一の自動車製造ラインだ。北米の自動車関係者は同社を、「ヌーミ(NUMMI)」と愛着を持って呼んできた。日系自動車メーカーにとっては、日米合弁という形態が、アメリカ進出における新たな挑戦のしるしであった。
だが近年、同施設は建物の老朽化が進み、さらに2009年6月1日のGMの経営破綻を受けて、トヨタ側の動きに自動車産業関係者の注目が集まっていた。
さて2009年8月中旬、NUMMIに関する「ある噂」が広まり始めた。
それは「フィスカーがNUMMIを買うらしい」というものだ。
そこで筆者は、フィスカーの広報担当ディレクターに8月末、この噂の真偽を聞いた。その答えは「確かに我々はNUMMIと交渉している。様々な選択肢があるなか、今後の動きについては現時点で明言出来ない」というものだった。
過去に一度も自動車の量産経験のないベンチャー企業が、世界自動車市場のトップ2であるトヨタとGMが過去25年間に着々と築き上げてきた生産拠点を買収する、というのだ。眉唾っぽく聞こえるこの話、しかし過去最大の構造転換期を迎えている自動車産業では、いつ何が起こっても不思議ではない。
とはいえ、フィスカーには謎が多い。
フィスカーとは一体何者なのか?その実態に迫ってみたい。