2019.7.11
「過剰投資」は金融緩和のせいではない、企業の金余りが原因
企業の「過剰投資」は人件費の圧縮などで利益剰余金が急増したからだ。金融緩和で「金余り」が生じたのではなく、金余りが金融政策を空回りさせたもので、金融緩和は全く無意味だった。
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『1940年体制―さらば戦時経済』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』『仮想通貨革命』『ブロックチェーン革命』など。近著に『中国が世界を攪乱する』『経験なき経済危機』『書くことについて』『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』『「超」英語独学法』などがある。野口悠紀雄ホームページ
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2019.7.11
企業の「過剰投資」は人件費の圧縮などで利益剰余金が急増したからだ。金融緩和で「金余り」が生じたのではなく、金余りが金融政策を空回りさせたもので、金融緩和は全く無意味だった。
2019.7.4
高い伸びを続ける民間設備投資だが、売り上げの伸びとのギャップから判断すると、過去数年間の設備投資の9割は“過剰投資”の可能性があり、将来の企業経営の負担になる恐れがある。
2019.6.27
フェイスブックの仮想通貨「リブラ」は利用者が使うだけでも巨大通貨圏が形成され、マネーロンダリングなどの不正取引の温床になる可能性もある。金融政策や国家体制への重大な挑戦になり得る。
2019.6.20
米国の高度サービス産業の就業者数は製造業の2倍近くで、6割の日本との産業構造の差が顕著だ。賃金水準や「自営業」の比率も高く、高度サービス業の隆盛が米国経済の成長を牽引している。
2019.6.13
サービス経済化が進む中、「高度サービス業」は今景気拡大期でも成長率や給与水準は高い。問題はまだ規模が小さく産業全体での割合が低いことだ。米国に比べ日本の将来の成長が見えない一因だ。
2019.6.6
日本経済停滞の根本問題は小売りなどの非製造業の小規模企業に現れている。売り上げが伸びず減量経営を強いられ人件費削減などが進む結果、全体の賃金も伸び悩み消費が停滞する「悪循環」だ。
2019.5.30
原油価格が下落した2015、16年、実質賃金の上昇で消費主導の経済に転換するきっかけをつかめるはずだったが、物価下落が不十分で機会を逸した。金融政策が逆の方向で行われたのも一因だ。
2019.5.23
今回の景気拡大期、非製造業で利益が増加したのは人員削減などで人件費を圧縮したからだ。人員が大きく増えたのは医療介護のような生産性の低い業種であり、長期的には問題を残している。
2019.5.16
アベノミクスで企業の利益が増えたといわれるが、製造業は2010年代から、売り上げが増えない「ゼロ成長産業」だ。利益の増加は円安で円建て輸出額が膨らんだのと原油価格の低下による。
2019.5.9
景気拡大は戦後最長の「いざなみ景気」に匹敵する長さだ。アベノミクスによる円安、輸出増加が力になったという見方があるが、今回の景気拡大では製造業で輸出による売り上げや生産の拡大はみられない。
2019.4.25
アベノミクスの成果として世帯収入や就業者数が増えていることが強調されるが、主婦がパートで働くなどの非正規の就業が増えても世帯収入が増加することは意味しない。むしろ減る場合もある。
2019.4.18
日本企業の「給与」は規模や業種で大幅に違う格差が生まれている。他業種への労働力供給のもとになっている低賃金部門は生活保護に近い低水準だ。これが平均値で分からない日本経済の“実像”だ。
2019.4.11
賃金が上昇しないのは、低成長によって経営不振に陥った零細企業から解雇された「低賃金労働者」が供給されたからだ。潜在的な低賃金労働者は、狭義で総就業者の5人に1人、広義だとその2倍の2800万人と推計できる。
2019.4.4
売り上げが減って減量経営を余儀なくされた小売りや飲食業からの低賃金労働力が供給源になり賃金が抑えられ、これがまた消費停滞につながった。この「悪循環」を日銀の政策が加速する。
2019.3.28
アベノミクスのもとで人手不足がいわれるにもかかわらず、平均賃金が上昇しないのは、経営が苦しい零細小企業が人員削減を進め、低賃金の労働力が大・中企業に供給されたのが一因と考えられる。
2019.3.21
アベノミクスの6年間、企業利益は著しく増加した。それは、人件費の伸びが抑えられたからだ。人件費が圧迫されたのは、零細企業の売り上げが伸びなかったため人員が削減され、その労働力が大企業に移る際に非正規化したからだ。
2019.3.14
“好景気”といえるのは大手製造業などに限られ、多数を占める零細企業の多くは利益も賃金も下がっている。高度成長期に解消されたとされる「二重構造」が復活し、「景気回復」とはほど遠い状況だ。
2019.3.7
「勤労統計」不正調査問題で改めてアベノミクスのもとでの賃金に焦点があたるが、戦後最長の景気拡大や就業者数が増えても全体の賃金が上がらないのは、賃金の低いサービス業で雇用が増えているからだ。
2019.2.28
「戦後最長景気」の特徴は企業利益が大幅に伸びたことだ。世界経済の拡大で輸出が伸び、売り上げが増えた一方で人件費が抑えられてきたからだが、消費は増えないまま景気はターニングポイントに近づいている。
2019.2.21
ブロックチェーン技術を利用しサプライチェーンの取引や部品の動きを瞬時に追跡、把握し、在庫圧縮や品質を向上させる取り組みが物流業界で進む。書類での記録が中心の物流業界を一変させる可能性がある。
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