
山田厚史
第21回
11月は世界の転換点になるかもしれない。6日に米大統領選挙が行われ、8日からは中国共産党大会が開かれて指導者が替わるからだ。いまや米中日とも暴走世論が政治家を呪縛し、政治家は世論に迎合するという状況が生まれている。

第20回
領土問題は双方に言い分があり、白黒を明確につけにくい。大事なことは領土という古傷を新たな紛争の芽にするのではなく、過去を乗り越える「解け合い」の足がかりにする知恵だ。

第19回
民主党の代表選では野田総理が圧勝した。これ受け輿石東氏が党幹事長に再任されたほか、安住淳財務大臣が幹事長代理に就任する。そこには総選挙を先延ばししたい民主党と、増税路線を堅持したい財務省の思惑が渦巻いている。

第18回
領土問題で中国、韓国との対立が深まる日本。11月の米大統領選挙を控え、日本では「ロムニーが頼りになりそうだ」という声があがっている。果たして、強いアメリカの復活を標榜するロムニー候補は、日本の強い後ろ盾になるのだろうか。

第17回
竹島の領有権を巡って韓国で反日感情が火を噴いた。愛国主義の背後には躍進する経済という光に潜む深い“影”がある。それは広がる格差と不平等だ。ささくれだった人心をどの方向に誘導するか、それが政権の課題となり、「ポピュリズム」の標的を日本に向けた。

第16回
国会では急転直下、消費税増税法案が成立した。野田首相は民主党の事情より消費税増税を選んだ。勝利したのは、官僚が操り、野田首相・谷垣総裁を二枚看板とする「とりあえず増税党」だ。早晩、総選挙になっても有権者は選択に迷う事態となった。

第15回
「インサイダー増資」で野村HDの渡部賢一グループCEOが引責辞任した。だが、本当に甘い汁を吸ったのは外資系のヘッジファンドだ。東京市場は、金融当局の監督・支配が彼らに及ばないといういびつな構造になっている。

第14回
V字型回復したJALが再上場の申請を行ったが、その「納税問題」が波紋を広げている。膨大な繰越欠損金によって、将来にわたって納税が免除されるからだ。公的支援で救済された企業の社会的責任について考えてみよう。

第13回
消費税増税は、財務省が引っ張ってきたことは明らかだ。結果は、財務省の完勝。だが、あまりの大勝に、省内では将来に向けた懸念の声も上がっている。それはなぜか。

第12回
ギリシャの再選挙では、緊縮財政派の新民主主義党が僅差で急進左派連合を抑えた。ギリシャ国民は絶妙のバランスをとったのだ。ユーロ体制を支えるかどうか、ボールは強国ドイツの手に渡された。ドイツはどこかの時点で政策転換に踏み切ると、私は見ている。

第11回
6月17日に迫ったギリシャの再選挙は、急進左翼連合が第1党を取りかねない情勢だという。左派が勝利すれば「ギリシャのユーロ離脱」が現実味を帯びる、といわれるが、その選択はあり得ない、と思う。EUの強国とギリシャの間で、互いに譲歩を引き出すチキンレースが続く。

第10回
G8は首脳宣言にギリシャの再選挙に干渉するような文言を盛り込んだ。ギリシャのユーロ離脱は自分たちにとって、都合が悪いからだ。小粒になったリーダーたちは、足元の民意に目を奪われ、時には牙を剥く市場に気をやみながら、綱渡りの経済運営を続けている。

第9回
フランスとギリシャの選挙結果は、緊縮財政への反発にとどまらない。根源をたどれば共通通貨ユーロという「無理」に行き着く。EUはいま「国家と市場の相克」に苦悶している。果たして、経済合理性は国家という枠を超えられるのだろうか。

第8回
この4月30日、ワシントンで日米首脳会談が開かれる。存亡の危機に立つ民主党政権が米国に後ろ盾を求める気配は濃い。野田首相は会談への手土産をテコに、大連立への後押しを期待しているかもしれない。米国もまた「操縦可能な政党」を求めている。

第7回
ドイツの放送局「ZDF」が製作した「フクシマの嘘」が、日本でもネットで話題になっている。「なぜフクシマであのようなことが起き、我々はどんな危険に曝されているのか」を象徴的に描いた力作だ。原発再稼働に動く野田政権はこの問いをどう答えるのだろうか。

第6回
北朝鮮のサイル発射の時が近づいている。本当に厄介な隣人だが、拉致問題の解決失敗以来、情報が一切絶えてしまった。いま我が国は「日本型太陽政策」へと転換し、北に対して内側からの変化を徐々に促す時ではないか。それができる位置にいるのが日本である。

第5回
アジアの発展から取り残されたミャンマーが変貌している。「民主化路線はどこまで本物か」という疑いの目もあるが、軍籍を離脱したテイン・セイン大統領は本気のようだ。「小国の外交術」に長ける同国と、日本はどう付き合うのか。

第4回
2011年の貿易収支が赤字になり、日本衰退論が盛んに議論されている。だが、貿易や経常収支の「赤字」「黒字」という表現が誤解を招く。日本の経常黒字が減っていくことで本当に困るのはアメリカなのだ。

第3回
米国を相手とするTPPの事前協議が始まった。米国は、自動車者分野における「軽の優遇」は非関税障壁だと指摘してきた。これは日本自動車業界の分裂を狙い、本丸のアメ車輸入台数を保証させようという米国得意の揺さぶりである。

第2回
「イランの核開発疑惑」が世界秩序を根底から揺さぶっている。米国主導の経済制裁の狙いは民主革命「テヘランの春」だが、イランの原理主義的宗教支配は強固だ。イランが引き裂く世界の混乱から、次の世界を読み解くヒントが見えてくるかも知れない
