「尖閣国有化」を明らかにした日本に対して、中国各地でデモが起きている。領土を「核心的利益」と位置づける中国は、監視船を尖閣周辺に派遣した。昔なら軍事的衝突もありえる局面だ。両国とも引くに引けない。この局面に米国はどう出るのか。11月6日投票の大統領選挙を争うオバマとロムニーの、どちらが日本に好ましい政策を掲げているのか。

大見えを切ったロムニー

「共和党のロムニーのほうが頼りになりそう」という声をよく聞く。中国に強い姿勢で臨むロムニーなら、領土問題で日本の肩を持ち心強い後ろ盾になってくれそうだ、という期待からだ。果たしてそうだろうか。

 ロムニーは「大統領に就任したら、中国を為替操作国に指定する」と大見えを切った。中国が嫌がる人民元切り上げを、力ずくで迫る「圧力重視の中国外交」である。

 オバマは中国を「重要な二国間関係」と位置づけ、対話路線を継続する方針だ。

「圧力」と「対話」。どちらに重点を置くかは、外交にとって永遠の課題だ。今回の大統領選は、共和党と民主党の外交方針の違いを鮮明にした。

 違いの根本は「米国の例外主義」を認めるか、という点にある。ロムニーは「米国は特別な国であり、国連に縛られない単独行動もいとわない」という考えだ。身勝手に聞こえるが共和党の伝統的な外交政策である。「強いアメリカ」を主張して対ソ強硬策を主張したレーガンや、イラク攻撃に踏み切ったブッシュらがこの路線を象徴している。

 世界の平和を守るため、と称して国際協調を無視してでも、米国の利益追求を進める、その力が米国にある、という考えだ。レーガンやブッシュが掲げたこの路線をロムニーは踏襲し、オバマ外交を「弱腰」と非難する。