
山田厚史
第61回
「集団的自衛権」の行使とは、世界に展開する米軍に日本が協力することである。だが、この日米同盟強化と安倍首相の掲げる「戦後レジームからの脱却」は相矛盾する概念なのだ。集団的自衛権は同盟離反という逆向きの力を内包している。

第60回
日米TPP交渉の結果をほとんどの新聞は「決裂」と報じ、読売だけ「大筋合意」と伝えた。その後の報道を見ると、結果は「大筋合意」。こうした報道の背後に、世論を誘導する権力とそれにすり寄るメディアの危うい姿が浮かび上がる。

第59回
巨大カジノを日本各地に作る「カジノ法案」が連休明けの国会で審議が始まる。成長戦略の目玉は「賭博」でという安易な発想に、政治家も経済界も群がる。この国はいつからこうもおかしくなったのだろうか。

第58回
外務省は3月31日、「ODA大綱を見直す有識者懇談会」の初会合を開いた。翌日、政府は「防衛装備移転3原則」を閣議決定した。この流れを考えると、「見直し」は安部首相の国家観を援助の世界に持ち込む危険性をはらんでいる。

第57回
オランダ・ハーグで開かれた核安全保障サミットで安倍首相は、プルトニウム・高濃縮ウランを米国に引き渡すことを表明した。今になって米国は危険極まりないこの核物質を「引き渡せ」と迫る。一連の交渉に安倍政権への不信が滲む。

第56回
政府がまとめたエネルギー基本計画の原案を見ると、原発事故に対する「深い反省」の中身が見当たらない。いま現在、原発推進を口に出さないが、温暖化対策をテコに原発再稼働・新設を軌道に乗せるという筋書きである。

第55回
シンガポールで行われていたTPP交渉閣僚会議が、「大筋合意」にいたらないまま閉会した。新聞は、「長引けば経済政策に影」などと書いているが、TPPとは何か、誰が得し、損するのは誰か。じっくり考えるよい機会だ。

第54回
イエレンFRB議長の登場と共に金融の量的緩和縮小が米国で鮮明になった。FRBの政策が反転すれば、じゃぶじゃぶな金融による「覚せい剤効果」は減衰する。注目されるのが日本、黒田緩和によるFRBの肩代わりである。

第53回
新聞の世論調査によれば、都知事選は自民党が推す舛添要一元厚労相が圧勝の勢いだという。反原発派が勝利するには、候補者を一本化するしかない。そのカギを握るのは共産党。小さな正義を超えた「したたかな連帯」を進めなければ、時代の潮流は超えられないだろう。

第52回
近年稀な安定感を感じさせた安倍政権も2014年は波乱に揉まれるだろう。アベノミクスはの本質は「ブラシーボ効果」=「ニセ薬効果」にある。その効果の賞味期限が近づいている。きっかけはさしずめ消費税増税だろう。

第51回
北朝鮮のナンバー2の張成沢氏が「国家への反逆」と断罪され、4日後に処刑された。この国の異常な出来事は、国際社会の経済制裁によって北朝鮮が追い詰められていることを示したと言えるが、兵糧攻めの強化は北朝鮮の軍人支配を強めることになる。

第50回
特定秘密保護法が間もなく国会で成立しそうだ。本来この秋の国会は「成長戦略国会」になるはずだった。日本が直面する優先課題はどこに行ったのか。首相に欠落しているのが優先順位付けと合意形成へのやる気である。

第49回
安倍政権が特定秘密保護法案の成立を急いでいる。野党との修正協議は枝葉末節に過ぎない。秘密の妥当性を判断する「独立機関の設置」や「無期限の秘密は認めない」という大原則は骨抜きになりつつある。

第48回
いよいよ特定秘密保護法案の審議が始まる。自民党は今国会で成立を目指す構えだ。役所が勝手に機密を決め、未来永劫封印することも可能で、国民の「知る権利」を無視した法案だ。今回の狙いは内部告発者とメディアを封ずることにある。

第47回
28日にみずほ銀行は、暴力団融資事件の顛末を第三者委員会の報告書にまとめ金融庁に提出する。ポイントは3つ。(1)チェック体制はなぜ働かなかったのか、(2)ウソはいかにして生まれたのか、(3)佐藤康博頭取の責任をどう考えるか、だ。

第46回
消費増税はいかにして決まったか。財務省・経産省連合が安倍首相ブレーンたちの影響を排除し、増税決定にこぎ着けた。増税が決まるや、各自の利害に基づき獲物の分捕り合戦が始まっている。そこで健在なのは「増税してばらまく」という日本型保守政治の風景だ。

第45回
ドラマ「半沢直樹」の最終回は42%という驚異的な視聴率を稼ぎだした。事実はドラマ以上に規模が大きく、策略に満ちている。半沢直樹はそれを白日の下にさらし、「信用を売る商売」という幻想に、とどめを刺した。

第44回
オリンピックの東京開催が決まり、日本は沸き返っている。だが、安倍首相が世界に公言したように放射能汚染水は完全にコントロールできるのか。東京だけが輝くことにならないか、そして財源は……。熱狂にあえて警鐘を鳴らす。

第43回
暮らしや社会の仕組みにこれほど影響する国際交渉はめったにない。ところが我が国の代表がどんな主張をし、いかなる交渉をしているか、その姿を国民に知らせない。TPP交渉は、その内容だけでなく、政策の決定過程に暗闇を抱えている。

第42回
8月15日、靖国神社に参拝したのは「小粒の閣僚」だけだった。地金をむき出すことは思いとどまった安倍首相だが、満たされぬ思いが噴出する先は集団的自衛権。解釈改憲を先行させ、憲法改正につなげようとしている。
