中国「ゼロコロナ」緩和でも経済回復が厳しい理由、伊藤忠総研が解説写真はイメージです Photo:PIXTA

年初に感染はピークを越えたが
変異株による再拡大リスクも

 昨年12月7日、中国政府はゼロコロナ政策の大幅緩和にかじを切った。高リスク地域での移動制限や入国時の隔離は維持するも、PCR検査の縮小、無症状・軽症者の自宅隔離容認、都市や省を跨ぐ移動に対する陰性証明・健康コードの提示不要化など、踏み込んだ措置となった。

 ゼロコロナ政策緩和のタイミングについては、重要政治イベントである3月の全人代後との見方が主流だったが、予想より早期に緩和された。早期緩和の背景には、厳しい行動制限による景気悪化に加え、昨年11月末に新疆ウイグル自治区で発生した火災事件を契機とした、全国各地でのゼロコロナ政策への抗議活動がある。

 1月8日からは、入国時の隔離措置を撤廃、新型コロナの感染症分類の引き下げに伴いリスク地域の設定や感染者の隔離措置も解除し、ウィズコロナへの取り組みが本格始動した。

 約3年にわたって実施され、経済・社会に多大な負の影響をもたらしたゼロコロナ政策がようやく緩和されたこと自体は前向きに評価できよう。しかし、高齢者へのワクチン接種や医療体制の整備が不十分な段階で、急速に感染対策が緩和されたため、昨年12月以降、主に都市部で新規感染者や重症者が急増、いわゆる感染爆発が発生した。

 衛生当局が無症状感染者数データの公表を取りやめ、有症状の感染者数や死者数の発表も1月9日以降停止されているため、政府公式統計では正確な感染動向の把握が難しいが、北京大学国家発展研究院は、1月11日までの累計感染者数が約9億人、感染率は64%に達したとの推計を発表した。中国疾病予防管理センターの呉尊友氏も1月21日、すでに全人口の約8割が感染済みと発言した。