「忘却曲線」はふつうの学習には
当てはまらない!
青砥 記憶といえば、有名なもので「忘却曲線」ってあるじゃないですか(編集部注:時間経過による記憶の節約率をグラフ化したもので、エビングハウスの曲線とも言われる)。
人は、覚えてもすぐに忘れちゃうから、復習が大切だというものです。
山内 1日たつと74%を忘れるというやつですよね…
青砥 それです(笑)。記憶が失われていくことは事実ですが、みなさんが学習するような記憶は、あのような曲線にはならないんですよ。脳内で保存する場所も全然違いますし。なので、あの曲線を通常の学習に応用することはかなりナンセンスなんです。
梅田・松山 ええ~!
青砥 みなさんの忘却曲線は、まず個々人による違いもありますし、また覚える内容によってもだいぶ異なります。
なので、学習内容ごとに個々人にカスタマイズした忘却曲線や定着曲線を描き、それを基に個々人に最適な復習タイミングなどを人工知能によって算出し、記憶定着効果を高めるシステムを創っています。
この「記憶定着効果を高める」というような技術は最終的にはアルツハイマー病などの認知症への応用も出来ればと考えています。
梅田・松山 それはおもしろそう!
山内 青砥さんが大学で学んだことが、まったく新しいビジネスに生かされているわけですね。教育の話はあとでうかがうとして、ニューヨーク市立大学でファイナンスを学んだ梅田さんの就職はどうだったんですか?
株式会社スペイシー CFO
両親の転勤などで幼少期にマレーシア、シンガポールに住む。その後、法政大学に入るが中退、留学し、ニューヨーク市立大学バルーク校にて金融などを学ぶ。ニューヨークにて投資銀行に勤務後、金融危機で帰国。国内事業会社の財務部門を経て、(株)スペイシーにCFO(財務・経営企画担当)として参画。今、注目のシェアリングエコノミ―、主に首都圏で空きスペースを活用した会議室運営の情報提供、決済などを行うサイトを運営、業界に革新的な視点を持ち込んでいる。柔術青帯。
梅田 僕はリーマンショックに翻弄されました(笑)。留学前から金融に興味があって、「finance&investment(金融&投資)」を専攻したんですが、就職シーズンにリーマンショックの影響で、ほとんど求人がなかったんです。
ボストンキャリアフォーラムといって、毎年秋に、3日間にわたって開催される就職フェアがあるのですが、200社近くが面接をしに東海岸にくるんです。学生も大勢参加して、毎年数百人はそこで就職が決まっていたのに、僕の就活した年は激減で…。特に金融関係の外資系日本支社の採用はほぼありませんでした。
山内 それは痛い経験ですね~。
会議室版の「Air B&B」
シェアビジネスの先端で働く!
梅田 それで日本での就職がなかったので、最初はニューヨークの投資銀行で働きました。その後、日本に帰国して、日本の事業会社の財務部門でディーラーを経験して、今はベンチャーで「SPACEE(スペイシー)」という会社のCFOをやっています。
この会社の事業の柱はシェア事業で、眠っている資産をどう活用するかという仕組みをウェブ上で展開しているんですが、おもしろいんですよ!
山内 今、はやりのシェアリングエコノミーですね。具体的にはどんなことをしているんですか?
梅田 今、メインなのは「会議室」です。会議室を貸したい人がスペイシーのサイトに部屋を登録して、逆に会議室を借りたい人がスペイシーのサイト経由で借りるマッチングをしています。1時間500円といった低料金で、さらに当日や時間直前でも借りられて、カード決済や請求書払いができるとか、利便性をすごくよくしたんです。
山内 500円は安い!私も小さなセミナーをするときに使いたいですね!(笑)当日予約ができるなんて便利そうです。
梅田 小さなセミナーやスクールレッスンなどの利用も多いのですが、以前はファミレスや喫茶店でしていたような、ちょっとした打ち合わせで使う人も増えています。1時間一部屋500円だったら、4人で使うと100円ちょっとですし、その値段で部屋を借りられて、さらに電源やホワイトボードなどもあるし、聞かれたくない内容の話もできて使い勝手がいい…ってことで、リピーターも多いんですよ。
松山 それは便利ですね!
梅田 貸す側も、眠っている資産を手軽に活用できます。たとえば、会社って土日休みじゃないですか。そこで、その土日を貸し会議室として、会社の打ち合わせスペースを貸し出すんです。起業直後の企業から「貸し出した収入で家賃分が浮いたので助かる」などと感謝されています。
青砥 今、流行の「Air B&B」みたいですね。
梅田 イメージ的には似ていますね。今はテキストや画像、音声など、ネット上にあがっていて、なんでもシェアしていると思うのですが、これからは資産やリアルなものもシェアする時代になってくると感じているんです。今後大きく成長しそうなベンチャーに参画できているのはすごく面白いです。
就活のときは就職がない…と一時はショックでしたが、日本でもアメリカでも英語が使えると、どこでも仕事はあるな、と今は思いますね。