記憶のメカニズムをスピーチに組み入れる
近田 マインドマップが世に出たのは1974年ですから、40年以上も使い続けられていることになりますね。マインドマップは当初、覚えやすく、思い出しやすいノートとして工夫されたので、記憶を助ける要素が記述法にうまく組み込まれています。
(ちかだ・みきこ)
株式会社ティズム代表取締役兼コンサルタント。日本唯一のThinkBuzanマスタートレーナーとしてライセンス・インストラクター(TLI)の養成に携わるほか、各種講座(マインドマッップ、読書術、記憶術など)に登壇、『新版 ザ・マインドマップ』『ザ・マインドマップ[ビジネス編]』(ダイヤモンド社)、『マインドマップ超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はじめ多数のトニー・ブザン公認書籍の翻訳・監修も手がけている。コーネル大学大学院経営学修士(MBA)。http://www.chikadamikiko.com/
トニー・ブザンさんは大学で心理学を専攻し、1970年代の初めに大学講師としてスタートしました。そのときの体験がスピーチの達人になるきっかけ、さらにはマインドマップの原型を作るきっかけにもなったんです。
当時の大学講師は、分厚いテキストを読み上げるスタイルが一般的だったようで、ブザンさんもそれに倣っていました。記憶について講義していたある日のこと、抑揚のない声でテキストを読み上げている自分に、飽き飽きしたそうです。そして、それは学生のためにもならないと気づき、記憶について話しているのに、学生の記憶を阻害するようなつまらない授業をしていることに茫然とした、ということです。
「講義内容が学生の記憶に残るような話し方をしたい」と考え、ブザンさんは歴代の心理学者が発見した記憶のメカニズムや記憶を助ける要素をスピーチに組み入れました。
具体的には、記憶に残りやすい出だしと締めくくりを大切にする。とくに冒頭部分で、テーマやトピックに興味を持ってもらう。自分に役立つと思ったら、覚えようとしなくても頭に残りますから。中だるみしやすい中盤では、声のメリハリをつけたり、ボディランゲージを工夫したり、ユーモアを交えたり、イメージが浮かびやすい表現をしたり。さらに、大切なことは上手に繰り返し、関連づけを促す……そして、インパクトのある締めくくり方にする。
ブザンさんはスピーチを学んだことはなく、自ら工夫を重ねて達人の域に達したそうです。
大嶋 トーストマスターズの場合でいえば、「冒頭は大切ですよね」とか、「構成はこうしましょう」とか、「言葉に注意しましょう」とかね。そういうのが全部プログラムになって、基本コース、応用コースと順番に学べる仕組みが確立されているんです。情報を細分化して、言語化して、膨大なマニュアルになっています。
僕はトーストマスターズ23年目になって、日吉トーストマスターズクラブを設立して活動を開始しました。このように、クラブ運営をすることでリーダーシップを磨きつつ、基本コース、応用コースを受講するなどしてスピーチ力を磨くことができます。ダブルで学びを得ることができるのが、トーストマスターズなんです。
近田 スピーチは英語で行うこともあるんですよね。
大嶋 メインは英語と日本語ですが、他にもフランス語、中国語など最近はいろんな言語が増えてきてます。