キーワードとイメージで発想を広げていく
――お二人がマインドマップを始められたきっかけを教えてください。大嶋さんは、トーストマスターズでマインドマップを知られたとか。
大嶋 もともと僕は営業職に就いていまして日頃からプレゼンする機会がとても多かったんです。けれど人前で話すのが苦手で、もっと話し上手になりたいと思いトーストマスターズの会員になりました。ただ、人は短時間で劇的に変われるものでもありませんよね。実際なかなかうまくスピーチできず、苦戦していました。
ある日、当時所属していたトーストマスターズクラブの定例会で、僕と同じようにスピーチが苦手な50歳過ぎの男性がスピーチをすることになりました。彼はお世辞にもうまいとはいえない。いつも原稿の文字ばかり目で追って全然聞き手を見ないし、自信なさげにうつむき加減に話すのが特徴的でした。
ところがその日の彼は違った。突然原稿から離れ、演台からも離れ、聞き手の前まで歩み寄って、相手の目を見ながら堂々とスピーチしたのです!突然豹変できた理由は何なのか本人に尋ねると、マインドマップに出会ったとのことで1枚のノートを見せてくれました。中央から枝分かれしたカラフルな絵を見ても、そのときはピンときませんでしたが、彼が短期間でめちゃくちゃ変わったことだけは確かでした。20年前の話です。
――大嶋さんがマインドマップを学ばれて、スピーチに一番役立つ部分はどこだと思われますか?
大嶋 マインドマップを学ぶ前は、スピーチ原稿を書いたりメモを準備していました。そうすると原稿やメモを目で追うことに気を取られ、かえってスピーチの妨げになるんですよね。ところがマインドマップはキーワードしか書いていません。アウトラインがはっきりわかるので、吹っ切れて話せるようになりました。
近田 アウトラインが明確だと、「迷子」にならないので安心ですね。マインドマップは、かいて準備する段階で、情報がしっかり頭に入りますから、スピーチの際に必ずしもマインドマップが手元になくても話せるようになるんです。ボディランゲージを交えたり、自由に移動したりしながら、自分の持ち味を生かして話せる。もちろんマインドマップが手元にあれば、より安心ですけれど。
――近田さんがマインドマップを始められたきっかけは?
近田 1984年に、Use Your Head(邦題は『頭がよくなる本』、トニー・ブザン著)の米国版に出会ったことです。薄い本で、カラーページもありませんでした。それでも、掲載されていたマインドマップを見て、「これは使えるかもしれない」とピンときました。マインドマップはキーワードとイメージでかくので、英語の文法は気にせず要点を整理できると思ったんです。私は当時、MBA取得のため留学して2年目、落ちこぼれ寸前の学生でした。
まず、ケーススタディの内容整理と講義録にマインドマップを使って手応えを感じ、徐々に用途を広げていきました。雄弁なアメリカ人相手にディベートするときや、プレゼンテーションの際にマインドマップを使うようになると、その効果はテキメンでした。言葉に詰まったときは、マインドマップに書かれたキーワードを指差せばいいという安心感もありましたね(笑)。
ビジネススクールを卒業後は投資銀行に就職し、ウォール街で大量の情報の処理、レポートを書く準備などにマインドマップを使いました。自分の中で仕事にかなり役立てている自負があったので、2006年にブザンさんと初めて会ったときはショックでしたね。私が思っていた以上に、マインドマップは奥が深いんだと気づかされたからです。
大嶋 僕もブザンさんの指導を直接受けたことで、いかに自分のそれまでの理解が浅かったかを思い知らされました。マインドマップをちゃんと理解すれば、スピーチはもちろん、アイデアを出すにしても、会議をするにしても、あらゆるビジネスシーンで役立ちます。