例えば、米国は人口が3億2000万人と日本の2.53倍なので人口で調整したメダル数は、実際のメダル数121個÷2.53=48個に相当すると考えられるのである。すると米国は確かにメダル数世界一ではあるが、人口対比では、日本の17%超過に過ぎないのである。

 他方、人口調整メダル数で目立っているのは陸上短距離の雄・ボルトを抱えるジャマイカである。実際のメダル数11個は、人口が272万人と日本の2%にすぎないジャマイカの人口調整メダル数は何と512個と日本の12倍以上になるのである。

 全体的に、図の人口調整メダル数を見ると、ジャマイカ、クロアチア、アゼルバイジャンといった例外を除くと、途上国で少なく、先進国で多いという一般傾向を読み取ることができる。

 中国や今回の開催国ブラジルは、それぞれ、6個、12個と非常に少なくなっている。中国のメダル数70個は13億人もの人口を抱える国としては圧倒的に少ないのである。中国は近年維持していた世界第2位以上の地位がリオ大会で英国に抜かれ第3位に落ちたため国内的にブーイングの嵐になったが、その際、「人口の少ない英国に抜かれるなんて」という声が大きかった。

 日本は、というと、実は、先進国の中で最低レベルである。今回調子の悪かったとされる韓国でも人口調整メダル数は53個と日本を上回っている。ドイツ、フランスとメダル数で肩を並べているからといって喜んでいる場合ではない。ドイツ、フランスは、人口が、それぞれ、8100万人、6700万人と日本の1億2700万人と比べると5~6割に過ぎないのである。

 こうした観点からは、何故、日本ではオリンピックの獲得メダル数レベルがこんなに少ないのかが問われなければならない。オリンピック大会の起源であるヨーロッパの競技文化にまだ馴染めないところがある点や遠慮がちといった日本人特有の国民性に理由を求めず、それ以外の合理的理由を探すと、私見では、日本では高校野球がさかんだからではないだろうか。

 金メダルの可能性のある運動能力抜群の生徒が、将来の高報酬と栄誉(イチロー!)が期待できるプロ野球での活躍を展望して、皆、高校野球の道に入ってしまうので、その他の競技スポーツでは怪物選手が現われにくいのではなかろうか。女性の場合は高校野球には向かわない。五輪金メダルの獲得数でリオを含めた過去5回の大会を通じて女性選手が男性選手を凌駕しつづけているのにもこのことが影響している可能性がある。

重要なのはスポーツをする環境
経済力が左右する五輪メダル数

 上で人口あたりのメダル数が先進国で多く、途上国で少ない傾向があると述べた。これは、考えてみれば当然である。栄養状態、身体の健康度、政情の安定度、スポーツする生活の余裕、また競技施設の充実度など、先進国の方が途上国よりスポーツする環境はずっと整っている。経済発展度を示す人口1人当りのGDPは、人口規模と同じぐらい五輪のメダル獲得数に影響を与えているという米国の学者の研究結果もあるぐらいなのである。

 人口規模と人口1人当りのGDPを掛け合わせるとGDP規模そのものとなる。従って、GDP規模(すなわち経済力)とメダル数とが比例するということになるのは当然である。メダル数がGDP規模に対応しているという世界的に流布した考え方に立って、日本はGDP世界第3位なので、2020年東京オリンピックのメダル数目標も世界第3位と定められたのではないかと考えられる。