経済発展路線に陰りが生じ始めた中、中国企業が日本企業のもつイノベーションを学び、その技術を導入しようとしている

 中国経済はいまや厳しい局面に直面している。

 これまでは、労働力人口が全体の人口増加率より高かったため、豊富な労働力が経済成長を後押しする「人口ボーナス」の時期にあり、その恩恵を満喫して、安い製造コストでいろいろなものを作っては海外へ輸出して、経済発展のスピードを維持してきた。

 当時の中国では企業を「做大、做強」にしようといったスローガンがよく聞かれていた。つまり、企業を大きく強くしよう、ということを求めていたのだ。規模とスピードが追求されていた時代だから、こう求めていたこと自体は咎められない。

 しかし、人口ボーナスが減り、これまで走ってきた経済発展路線に陰りが生じ、安かろう悪かろうのやり方では、企業と経済をこれ以上発展させることが困難になってきた。倒産に追い込まれた企業も後を絶たない。企業経営者も政府関係者も途方に暮れている。

 中国経済はこれからどのような路線を進むべきか。企業はどのような方法で競争相手の企業に追いつき、追い越すのか。企業はどこから新たな発展を支える生命力を得られるのか。これは中国企業や地方政府関係者が考え込んでいる最新の課題だ。

 特に民営企業が集中する長江デルタ地域の地方政府も企業も日本の技術力に目を向けた。ある分野に特化して、その分野の極みになるような製品を製造する日本企業を高く評価する。匠の心という表現に相当する言葉もこの頃、中国で流行っている。「工匠精神」というものだ。

 日本企業がもつイノベーションを学び、その技術を導入し、日本での投資や日本企業との提携ないしM&Aの希望がいたるところから出ている。