小池百合子東京都知事が築地市場の移転延期を表明した。都知事就任から1ヵ月も待たずに派手な一手を繰り出し、剛腕を見せつけた小池知事だが、その真意はどこにあるのか?敵対関係にあるとされる都議会自民党は対抗策を打ってくるのか?そもそも、移転延期は現実的な判断なのか?東京都政に精通するジャーナリストの鈴木哲夫氏が解説する。

選挙戦略で築地に注目した小池知事
移転延期の裏にはブレーンの存在が

 8月31日、小池百合子東京都知事は記者会見を開き、11月7日に予定されていた築地市場の豊洲への移転延期を発表し、大きな波紋を投げかけている。築地市場の移転問題は長い間議論されてきたものだ。なぜ小池知事は土壇場になって方針転換をしたのだろうか。

小池知事vs巨大利権、盛り土問題を契機に全面対決へ立候補当初は、築地問題を主張しておらず、選挙戦略で途中から政策に取り入れた小池知事。しかし、豊洲新市場に盛り土がされていない問題が発覚して以降、事態は急変。小池知事による、東京都庁の利権追求の手が強まってきた
Photo:日刊スポーツ/アフロ

 都政に詳しいジャーナリストの鈴木哲夫氏は、小池氏が築地市場の移転問題に注目したのは当初、選挙戦略的な意味合いが強かったと見る。

「実は都知事選に立候補した時には、築地市場の移転問題は小池さんの主な主張にまだ入っていませんでした。築地市場移転問題に注目していたのは、都知事選の立候補を表明していた宇都宮健児さんで、移転作業の中断・再検討を訴えていました。しかし、宇都宮さんは野党候補一本化のために自分は出馬を見送り、鳥越俊太郎さんに政策を託しました。ところが、鳥越さんは築地市場の問題をなかなか表だって主張しませんでした。支援政党である民進党に築地市場移転推進派が多かったという事情があったようです」

「小池さんは、鳥越さんが取りこぼすであろう宇都宮さんの票を取り込むために築地市場の問題に注目したのです。それで、選挙戦中の7月22日に築地市場近くで『安全性の確認、使い勝手の問題、皆さまの納得をいただくために一歩立ち止まるべきだ』と演説したのです」

 小池知事が築地市場に関心を持ったのは、選挙戦術からだが、知事に当選してからのアクションはかなり早かったと言えよう。これについて鈴木氏はブレーンの存在を挙げる。

「小池さんの対応が早かったのは、準備が早かったからです。小池さんが本部長になっている都政改革本部の特別顧問に青山学院大学国際政治経済学部教授で弁護士の小島敏郎さんという方がいますが、この人は環境省出身で次官級ポストの審議官を務めていました。この小島さんが選挙期間中から豊洲の汚染状況などの情報の収拾・分析に着手していて、何が問題なのか、どうすれば解決できるかを研究していたんです。それで、移転の延期という決断が早々にできたのです」