サマーコテージで「なにもしない」
フィンランド人にとっての理想の夏休み。それは、4週間の休暇をすべて田舎の湖近くのサマーコテージで過ごすことです。生活の忙しさや町の喧騒から離れ、自然の中に溶けこむのです。
サマーコテージとは夏の休暇を過ごすコテージのことで、多くの人は湖の近くに持っています。別荘のようなものですが、特にお金持ちの人でなくても、ふつうに働いていればサマーコテージを持っている人はたくさんいます。フィンランド人にとって、夏をコテージで過ごすことはふつうのことなのです。
コテージにいるあいだ、特別なことはなにもしません。「なにもしないこと」が必要なのです。なにもしないことが、冬から次の夏まで続く仕事や家事、育児などの役割をしっかりとこなす力を養ってくれます。
私のサマーコテージ生活では、湖の近くの石の上に座って瞑想をします。なにもない空間を見つめ、湖の向こう側の岸を眺めます。そして、本を数冊読み、親せきと会います。田舎道の両側にある森の中を長い時間散歩します。シンプルに、地元でとれたものを食べます。
それから、冬に備えて菜園のイチゴや野生のブルーベリーを摘み、プレザーブにしたり、冷凍したりします。夏のごちそうを隠して冬じたくしているリスのように。これで冬に夏をまた楽しむことができます。そして、ビタミンも保存できるのです。
この夏は特にブルーベリーで冷凍庫をいっぱいにしました。夏を存分に楽しみ、冬に備えつつ、冬を楽しむための準備もするわけです。
フィンランド人は、自然と静けさにかこまれたサマーコテージで、家族とともにゆっくりとした時間を過ごすことが好きです。それが豊かさなのです。この「なにもしない」ぜいたくな時間を一年間ずっと楽しみにしているのです。