邦銀のユニバーサルバンク志向

 2009年10月1日、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友銀行、日興コーディアル証券は、三井住友銀行が日興証券を傘下に収めるというニュースリリースを行った。その中で、3社は、「昨年(2008年)9月のリーマンブラザーズ破綻を契機に、世界的に金融再編が進められ、銀証一体化の動きが加速するとともに、国内ではファイアーウォール規制の見直しがなされる等、金融業界を取り巻く環境は大きく変化しています・・次世代に向けた新たな顧客ニーズや事業機会を果敢に捉える新しい金融ビジネスモデルの創造が期待されています」とした上で、「リテール・ホールセール事業ともに、商業銀行の持つ顧客基盤、安定性・安心感と、日興コーディアル証券の専門性の高いサービスとを融合させた新たな『複合金融』ビジネスを創造」と高らかに謳っている。

 実際、日本においては、93年以来、銀行と証券の相互乗り入れはどんどん進められている。具体的には、93年に銀行と証券会社は、子会社方式による相手業務への参入が認められ、その際に利益相反や銀行による優越的地位の濫用を防止するために設けられたファイアーウォール規制も段階的に緩和されており、09年6月の緩和によって、銀行と証券会社の役職員の兼職が認められ、顧客情報の授受もほぼ自由になった。

 銀行や証券会社は、銀行や証券に限らず、グループ内全業務の間の利益相反への目配りを求められているが、役職員が兼務し、顧客情報が共有された組織で利益相反を全くなくすことは不可能である。

 事実、3メガバンクは、2010年秋、共同出資で企業再生ファンド運営会社を作り、その役員も派遣し、自らの出資金を元に融資先に投資し再生させるビジネスを始めているが、これなどは自らの融資先に自らのカネで出資し、或いはその債権を買い取り、与信格付けを上げ、結果的に銀行の与信関連費用を削減するという、まさに利益相反の典型例とも言えるものである。

 このように、日本においては、リーマンショック後の今でもなお、金融機関のコングロマリット化、ユニバーサルバンク化が志向されている。しかし、この動きは、世界の金融規制の方向性とは正反対の方向を向いたものである。