せっかくの支援も実らない
「ちゃんとした生活」が分からない貧困の子たち

橘 私が講演会などで貧困女子の状況を話していると、「でも彼女とはスマホでやり取りしているんですよね?」と、ナンセンスな質問をしてくる人がいます。当事者の困窮ぶりを見てきた私からすると、どうしてそこまで追い詰めるの?って気持ちにはなりますね。

中村 ただ、その貧困女子たちが支援を受けて、その後ちゃんと生活するかといえばそうでもなかったりする。

橘 そうですね。私たちは、帰る場所がなくてお金にも困っているような子を保護して、寮の一室を提供することもあるんですけど、その後、彼女たちが継続的に家賃を払い続けることができるかといえば、そうでもないことが多い。

 仕事も続かないし、買い物だってしたくなる。結果的に家賃とか後回しにされるんですね。大家さんの立場からすると「遊びに行ってるし、買い物だってしているのに、お金ないと言われても…」ってなる。支援者としては、いつもそのギャップに苦しみますね。

鈴木 ちゃんとした生活を営む、その「ちゃんと」っていう状態は、教わって習得していくものですよね。与えられるべきものを与えられてこない子たちが普通にちゃんと生きていけないのは、ある意味当然の話。自己そのものが確立される前の段階で、世の中にぽいっと放り出されちゃった子たちに対して、ただ単に自己責任で責めるっていうのがNHKの貧困叩きをする人たちの属性だと思います。

中村 貧困叩きをしているのは、それなりに真面目にやっている人たちだと思うよ。やっぱり非正規で低賃金に固定されて、未来が見えない貧乏は心の余裕をなくす。自分自身が普通の生活ができないのに、そんな配慮はできないでしょう。末端の労働者の賃金が上昇すれば、比例して貧困叩きみたいな現象は減ると思うよ。

鈴木 一番困るのは、貧困コンテンツとwebメディアの親和性が高すぎること。もし今回のNHKの報道と同じ内容を、webメディアでやっていたらPV(ページビュー)はすごいことになっていたでしょうね。ネットメディアはPVを稼ぐほど利益につながるわけですから、利益を優先するなら、あえて炎上するようなネタを投下したほうがいいという結論に至ってしまう。炎上要素を混ぜるなどしてアンチを刺激させる。当事者が傷つくコンテンツにかぎって、お金に繋がるという構造が貧困報道をより歪ませている。

中村 刺激を提供して売り上げ競争するのは、社会的責任のある大手メディアがやることじゃないよね。民間の中小がやること。あと、貧困コンテンツがウケるのは、貧困を「他人事」として見られない人が増えていることもあるでしょう。

鈴木 貧困番組を見て、自分が貧困に陥らないためにはどうするか、当事者を反面教師にする人は多いと思いますよ。健康番組と同じですよね。