ガソリンスタンド業界が先の見えない大激動期を迎えている。ガソリン価格は夏以降急落したものの需要の減退傾向は続いており、価格競争は激化。一部の石油元売りが始めた「新仕切り体系」が安売りに拍車をかけている。石油元売り、スタンド共に疲弊し、特にスタンドの廃業は増加の一途をたどりそうだ。

 「自分のスタンドの仕入れコストを考えず、近隣のライバル店に価格を合わせてしまう経営者が後を絶たない。赤字覚悟で販売するスタンドも続出している」

 ある石油元売り会社幹部はため息交じりに語った。

 今年になってガソリンスタンドは非常に厳しい状況に直面してきた。原油価格の高騰に伴ってガソリン価格が急騰。レギュラーガソリンは、8月に1リットル当たり185円(全国平均)に上昇。8月にはガソリンの需要が前年同月比で14%も減少した。

 悪いことに、ガソリン価格が下落に転じた9月以降もドライバーの節約マインドは変化せず、需要は低迷。販売量が20%以上減少したスタンドもある。未曾有の需要減退のなかで、背に腹は代えられず価格競争を仕掛けるスタンドが増加した。

 スタンドの経営に最低限必要な粗利益は一般にガソリン1リットル当たり10円程度。だが競争が激化するなかで、「粗利益が5円程度しかないスタンドが増えている」(都内のスタンド経営者)。先の見えない消耗戦にスタンドは疲弊している。

原油価格の急落が
スタンドの競争を激化

 ここまで追い込まれているのは、9月以降の原油価格の下落ペースが速過ぎたことに原因がある。

 ガソリン流通にはおおまかに分けて2つのルートがある。石油元売り会社が契約した系列に販売する系列ルートと、石油元売り会社が余剰ガソリンを商社経由で販売する業者間転売(業転)ルートだ。この業転ルートで販売されるガソリンが「業転玉(ぎょうてんぎょく)」で、最も安い種類のガソリンとなることが多い。