「魔性の女」として名高いルー・ザロメ

 そんなかわいそうなニーチェだが、ある意味当然だったのかもしれない。

 なぜなら、ルー・ザロメは「世紀の魔性の女」という異名をもつほどモテる女性だったのだ。

 ザロメはニーチェをフッておきながらも「あなたの才能は素晴らしいから近くで学びたい!」といってニーチェと同棲をするくらいブッ飛んだ思想の持ち主。

 そんなザロメは、ある学者から熱烈なアプローチを受けて結婚するが「結婚してもいいけど、あなたとは肉体関係は持たない」と条件つきで籍を入れる。

 そして詩人・リルケと不倫三昧の日々を送りながら、最終的に精神分析医のフロイトに師事する。

 当時の偉人を渡り歩いているザロメだが、本人は峰不二子のようなクレバーな女性ではなく、大人と子どもが同居しているような純粋な性格の持ち主であったようで、不思議な魅力があったからこそ「世紀の魔性の女」と呼ばれるほど、寵愛を受け続けたのかもしれない。

そんなニーチェが現代へ……

 「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」では、そんな生涯モテなかったが、強気発言を繰り返していたニーチェを「強気でオタク気質」な人物として描いている。

 「人生を危険にさらすのだ!」「脱皮できない蛇は滅びる」などコピーライター顔負けの優れた語彙センスで、胸をつく辛辣な名言を残したニーチェ。

 今一度、生きる意味を追求したニーチェ流の“独特なひらめき”を学んでみてはいかがだろうか?

原田まりる(はらだ・まりる)
作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター
1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある