介護ビジネスは「成長が見込める市場」?
失敗、撤退するケースも多い

 我が国において高齢者介護事業は数少ない「成長が見込める市場」と言われている。2000年度に始まった介護保険の総費用は3.6兆円だったが、2016年度には10.4兆円に伸びている。そして、2025年度には約21兆円まで膨らむ見通しだ。また、総務省が本年9月15日に発表した65歳以上の高齢者人口は3461万人となり、総人口1億2695万人に占める割合は27.3%となり過去最高となった。

 高齢者の数だけ見れば市場は拡大している。

 65才以上の高齢者人口は増加しているが、これはあくまで元気な高齢者も入れての数であり、介護ビジネスの対象者である要介護認定者に限ってみると、高齢者の約18%程度に過ぎない。そして高齢者問題は都市問題ともいわれ、都市部に偏在していることも事実だ。

◆図表:介護保険の対象者とその人数

【出典】平成26年度介護保険事業状況報告年報(厚労省)
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介護ビジネスの対象者となる要介護高齢者が増加していることから、介護ビジネスに参入すれば成功するというイメージがわくのは当然であろう。しかしながら、実際は失敗して、撤退するケースが多いのが現状だ。

 東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業」の倒産状況(2016年1-9月)によると、倒産の原因別では、順に、「販売不振」、「事業上の失敗」、「設備投資過大」という。「販売不振」は、利用者の獲得ができなかったことが要因として大きい。

 例えば、東京近郊にある定員10名の通所介護(デイサービス)事業者は、昨年の介護保険制度改正で報酬単価が切り下げられ、毎月100万円の減益となった。リハビリを売り物にしており、午前と午後の短時間のサービスを行っていたが、短時間の利用者の報酬単価が引き下げられ、仕方なく長時間のサービス提供時間に変更した。そうしたところ近隣にできた大手のフランチャイズで拡大しているデイサービスに利用者と職員を引き抜かれてしまった。年明けに閉鎖予定である。

 また、あるサービス付き高齢者向け住宅の事業者は、建築業者が作成した収支予想の通りの入居が進まず、1年が過ぎようとしているにもかかわらず定員18名のうち8名しか入居者がいない。その入居者も、要介護度が1・2程度の軽い人が多く、現在では赤字を出し続けている状態だ。事業譲渡したとしても負債だけが残るので、譲渡できない状態が続いている。