介護ビジネスという幻想
誰でも儲かる時代は終わった

 既に介護ビジネスに参入している事業者は、思った以上に困難な事業であることがよくわかっている。その理由は、(1)3年ごとの報酬改定(どんどん下がっている)、(2)介護人材が採用できない、(3)利用者が獲得できない、(4)厳しい決まり(法律・規制等)で縛られており、違反すると退場させられる――などだ。

 それでも介護ビジネスは日本において数少ない成長が見込める市場であり、将来性があるビジネスといえるであろうか。

 確かに、大手資本が運営する都心にある一部の高級有料老人ホーム系は、堅実に事業拡大をしている。しかし、それは富裕層を対象としているからに他ならない。

 高級有料老人ホームは、保険適用以外の部分において、大きく「上乗せの価格」の設定が可能だからだ。だが、大多数の介護サービス事業者は、中間層から低所得者層が対象となり、国が定める介護報酬の価格だけの収入しかないのが実情である。

 また、異業種から介護サービスに参入した企業は、「本業との相乗効果」を狙っているというが、その結果が見えてくるまでにはまだ時間がかかりそうだ。

 介護ビジネスは、国が支払いを保証してくれる保険で賄われ、「とりっぱぐれのない堅い商売」といわれてきたが、既に体力勝負の様相を示してきている。

 高齢者は増えているのだから、「どこで介護ビジネスをやっても儲かる」という時代は終焉を迎えた。

 大多数の事業者にとって「価格決定権のない官製市場」では、サービスの展開場所の綿密な市場調査と人材採用、人材定着のための仕組みづくり(介護業界は退職金がない事業者が大多数を占めている)ができたところが生き残っていくであろう。

 冒頭で紹介した経営者は、有料老人ホームの入居一時金をゼロにして低価格路線で規模を拡大した。終盤は、入居者が到底入居しそうもない地域にも土地オーナーと建築会社のからの誘いで建物を建て続けた。入居者が獲得できず、介護職員が採用できないというダブルパンチが続き、事業売却を決めた。

 現在は、売却した資金を元手に高齢者人口が1億6000万人存在する新天地「隣の国」への進出を思案しているという。