医療事業を売却し、半導体と原子力をコア事業としてグループを支える体制を敷いた東芝。その半導体事業が好調だ。主力のNAND型フラッシュメモリーは、スマートフォン向けだけでなく、世界中で増強投資の進むデータセンターのサーバー向けの需要が急増している。新技術の3次元(3D)フラッシュメモリーの量産を早期に軌道に乗せることが不可欠だが、先行するサムスン電子に追い付けるか。成毛康雄副社長に聞いた。(「週刊ダイヤモンド」2016年11月12日号特集「東芝 再生の難題」より。「週刊ダイヤモンド」編集部・村井令二)

――NAND型フラッシュメモリーの出荷が好調で、東芝全体の業績をけん引している。背景は何か。

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 世界でスマートフォンの出荷台数はそれほど伸びていないが、1台当たりのメモリー搭載量が格段に増えている。中国スマホの最新モデルは、昨年8〜16ギガバイト(GB)だったのが、今年は32〜64GBの容量が普通だし、米国系は最大容量256GBモデルを発売した。来年は、インドのスマホもメモリー搭載を増やしてくるだろう。スマホの高機能化で、NANDの需要はまだまだ伸びる。

――来年もスマホ向けのメモリーが供給先のメインになるか。

 スマホだけではなく、データセンターのサーバー用途の引き合いが急速に増えている。『ポケモンGO』などスマホゲームや、映画・音楽のネット配信の拡大で、クラウドのデータセンターの増強投資が拡大しているが、不特定多数のアクセスのあるデータセンターの記憶装置では、(HDDよりも低消費電力で熱も出ず、読み出し速度の速い)フラッシュメモリーのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)が大量に使われるようになっている。クラウドの容量が増えれば、ダウンロードするスマホの容量も増える。メモリー需要は、来年も再来年も続く。サーバー用のSSDは、量産が立ち上がっている3次元(3D)フラシュメモリーのメインターゲットになる。