②人種別
 白人はトランプ優位、非白人はクリントン優位という状況は、前回のオバマ、ロムニーの対立の時と同じだったが、前回との比較では、白人の投票率はあまり変化がなかったのに対して、黒人など非白人のクリントンへの投票率が軒並み減っている。今回の民主党候補が黒人から白人に代わったので非白人の熱心さが衰えたためと考えられよう。選挙前にオバマ大統領は、非白人の有権者がどれだけ投票所に行くかを心配していたというが、まさに、この懸念が現実となったのである。この結果、ウエイトづけした人種別の投票シフトでは、おしなべてトランプ・シフトとなった。

③年齢別、収入別
 「若い世代」と「低所得層」では、もともと、民主党支持者が多く、今回もこの傾向があらわれている。ところが、今回、こうした層のクリントンへの投票率が低下した。これは、若者や低所得者を中心とする現状不満層が、民主党の現政権の実績に満足せず、民主党から離れたことを意味している。片やトランプ候補の方は、前回の共和党候補と比べ、若者の票は増えていないが、低所得者については、3%ポイントも多くの票を得ている。低所得者のクリントン票は逆に11%ポイントも減っているので、合わせて14%ポイント、これをウエイトづけして、4.0%ポイントのトランプ・シフトである。

④学歴別
 前回、前々回はオバマ候補が大卒以上でも未満でも多数の票を得ていたが、今回は学歴別の状況が一変した。すなわち、大卒以上でクリントンが増え、トランプが減っており、大卒未満ではちょうど逆の方向となった。すなわち、高学歴層と低学歴層で国民が逆の方向を向いてしまったのである。選挙戦の中で、トランプ候補が、クリントン候補をエスタブリッシュメント(既得権益層)の象徴と見なし、それに対抗する意味で、ポリティカル・コレクトネス(人種や宗教に起因する差別を否定する「政治的に正しい」振る舞いや表現のこと)に拘泥せず、歯に衣(きぬ)着せない、ある意味で暴言とみなされる表現で、イスラム教やマイノリティ、女性について語った点が、低所得、低学歴の米国人のある意味の共感を得たことを反映していると見られる。

⑤地域別
 まず、今回の結果を見ると、クリントン優位の都市とトランプ優位の地方と全く正反対の結果である点が目立っている。ところが、前回との比較ではすべてでクリントン候補が票を減らし、それとともに地方では、トランプ候補がかなり票を伸ばしている。ウエイトづけした結果では、すべての地域でトランプ・シフトが起こっている。

 一般の論調を思い出してみると、①については、最後の「ガラスの天井」が破れなかったという点や女性票が動かなかった点が話題となっているが、男性の投票が減ったという点があまり言及されないのは不思議である。データからは、やはり、多くの米国人男性が生意気な女性は嫌いと考えて投票したとしか見えない。②については、事前予想において、非白人の投票行動が軽視されていたため、思わぬ結果になったと考えざるをえない。③、④、⑤は、貧富の差、学歴差、地域格差における国内の分裂が大統領選の中であらわになった報道や有識者がしばしば強調する通りであろう。