自宅を担保に入れた時点で、家族を人質にとられてしまった
──2回目のリブートの立役者だった荻野さんが後々、斉藤さんの前に立ちはだかることになるわけです。そのあたりは本書を読んでいただくとして、斉藤さんはもう思い出したくもないような苦しい時期を何度も過ごしてきたわけですが、なぜ心が折れなかったのか。イヤになって投げ出したくなる、逃げてしまう人もいるのではないかと思うのですが。
日本では、中小企業の場合、社長は事実上の無限責任で、借り入れのときに連帯保証をしなければ金融機関は貸してくれません。さらに、僕自身の判断ミスで、自宅を担保にお金を借りてしまった。その結果、僕だけではなく、家族まで無限責任の輪に引きずり込んでしまった。それが一番大きいです。自分一人の問題なら、楽になるために破産や倒産、あるいは新会社方式で会社を身ぎれいにして再出発、という手もあったと思います。そういうアドバイスもいただいたんですが、まったく心が動きませんでした。家族、それに出資してくれた仲間や社員のことを考えれば、僕には諦めるという選択肢はなかったんです。
どんなに苦しくても、「踏まれても根強く忍べ福寿草やがて花咲く春もあるれば(下の句は諸説ある)」の心境で、いつかは必ず復活できると信じていました。僕は根っから楽観的なんです。
──もともと明るい未来を語る人。
そうです。放っておくと、どんどんいいほうに考えるタイプです。常に明るい未来を語る、過度に悲観的にならないというのは、折れずに何度もリブートするときに大切なことだと思います。本書のプロローグでも、起業で一番大切なこととして「鈍感なこと」を挙げています。
──それだけ楽観的な斉藤さんが、精神的にも追いつめられた。
10円ハゲができました、ある日突然。