乱気流時代の経営
ダイヤモンド社刊
1631円(税込)

 「市場が成長しているとき、あるいは産業構造が変化しているとき、成長は企業存続の条件である」(『乱気流時代の経営』)

 とはいえ、長期にわたる高度の成長は不可能であり、不健全である。それどころか、あまりに急速な成長は組織を脆弱化する。マネジメントを不可能にする。緊張、弱点、欠陥をもたらす。それらの緊張、弱点、欠陥のゆえに、ちょっとしたつまずきが致命傷となる。

 ドラッカーは、今日の成長企業が明日の問題児になる宿命には、ほとんど例外がないと言う。

 成長を目標にすることは間違いである。大きくなること自体に価値はない。よい企業になることが正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。

 しかし、存続の条件としての成長の最低点は検討しておかなければならない。存続のための地位は確保しなければならない。

 つまり、成長の最適点を検討しておく必要がある。それ以上成長すると、資源の生産性が犠牲になる点はどこか。収益性を高めようとすると、リスクが急激に増大する点はどこか。成長の最高点ではなく、最適点こそ成長の上限としなければならない。

 資源の生産性を全体として高める成長は、健全な成長である。十分な栄養を与え支援しなければならない。これに対し、量だけ増えて全体の生産性を向上させない成長は、脂肪太りである。

 「生産性の低下を招く成長は、前癌症状ではないにしても腫瘍である。手術で切除しなければならない」(『乱気流時代の経営』)