「溢れたときは、“あ、ちょっとできるようになった。じゃあ、もう少しコップを大きくして、水を入れてみようか”と思うじゃないですか。すると、次に溢れたときは、ランクが1つ上がったときだと思うんです。そうなると、もっとコップを大きくしようという話になる。その繰り返しで、できたものが積み重なっていく。その1つ1つの瞬間が、ドラッカーのいう、目標になるのではないか」

 たしかに、「引きこもり」になりやすい人たちは、目標が高過ぎて、現実とのギャップが埋まらずに、心が不安定になる傾向がある。しかし、最初から、バケツサイズのコップに水を入れようと思っても、なかなか埋まるものではない。

 最終的に大きな目標を持っていても、最初は小さなコップに水が溜まるまで入れてみようという考えでいるほうが、“成果”を理解できる。その「小さなコップの考え方こそ、ドラッカーのいう目標管理」と中野氏は話す。

「しかも、水を注いだ場所が、自分の得意なところや好きなところ、強みを発揮できるところだと、なおいいですね。ドラッカーがよくいっている言葉は、“弱みで何か大きなことは達成できない。強みをつかって何かを達成する”です。そうはいっても、世の中、なかなかうまくはいかない。でも、自分の興味のあることや、やっていて面白いことは、自分の強みにかなり近い場所だと思います。そういう所をどんどん伸ばしていくことが、大切なんです」

東日本大震災・被災地の惨状を見て
「何か力になりたい」と思う引きこもりも

 一方で、「引きこもり」傾向の人たちは、心が優しくて、他人を気遣う人が多い。魅力的に思える椅子があっても、自分がそこに座ってしまうと、周囲や社会に迷惑をかけてしまうのではないかと考え、あえて他人に譲ってしまい、自ら椅子取りゲームから降りてしまう。

「他人を気遣おうと思ったときに、もっと広く社会全体を考えたらどうなのかという視点も必要かもしれません。日本の国民全員が、自分の得意分野で仕事できる環境だとすれば、日本の国力は、かなり上がると思います。引きこもりの人たちが持っている潜在能力を社会に貢献すべきなんです。その能力をつかわないのは、社会的損失だということに、気づいてほしいですね。引きこもりの人たちを欲している社会の機能は、どこかにあると思うんです」